介護のはじまりガイド
介護保険の自己負担割合は何%? 所得別の計算方法と高額介護サービス費
「親の介護で月いくらかかるのか」を考えるとき、まず知っておきたいのが自己負担割合です。介護保険サービスの費用は原則1割が自己負担ですが、所得によって2割・3割になる場合があります。さらに月額に上限があり、超えた分は払い戻される制度もあります。「自分の親はどの割合か」「上限を超えたらどうなるか」を、この記事で整理しました。
公開: 2026-06-20
自己負担割合の全体像 — 1割・2割・3割の3段階
介護保険を使うと自己負担は何割になるんですか? 全員同じですか?
介護保険サービスの自己負担は原則1割ですが、所得に応じて2割または3割になる方もいます。どの割合になるかは、前年の所得をもとに毎年7月に判定され、「介護保険負担割合証」という書類で通知されます。
毎年変わることがあるんですね。では親が今どの割合か、どうやって確認すればいいですか?
毎年7月ごろに市区町村から届く「介護保険負担割合証」を確認してください。この書類に、その年度(8月1日〜翌年7月31日)の負担割合が記載されています。介護保険被保険者証とあわせて大切に保管してください。
- 原則は1割。大多数の方(住民税非課税世帯を含む)が対象
- 一定以上の所得がある65歳以上の方は2割
- 現役並み所得の65歳以上の方は3割
- 40〜64歳の第2号被保険者は原則1割(所得にかかわらず)
- 負担割合は「介護保険負担割合証」に記載。毎年7月に更新される
所得による負担割合の判定基準
「一定以上の所得」って、具体的にはどのくらいですか? 年金暮らしの親でも2割になることはありますか?
はい、年金収入がある方でも条件によっては2割・3割になります。判定は本人の合計所得金額と年金収入+その他の合計所得金額(世帯単位)の2つの条件で行われます。
| 負担割合 | 本人の合計所得金額 | 年金収入+その他所得(同一世帯の65歳以上合計) |
|---|---|---|
| 3割 | 220万円以上 | 単身:340万円以上 / 2人以上:463万円以上 |
| 2割 | 160万円以上220万円未満 | 単身:280万円以上340万円未満 / 2人以上:346万円以上463万円未満 |
| 1割 | 上記以外(160万円未満、または所得基準を満たさない) | 単身:280万円未満 / 2人以上:346万円未満 |
※ 合計所得金額は、収入から必要経費や給与所得控除・公的年金等控除などを差し引いた後の所得額です。年金収入そのものとは異なるため、通知書や確定申告書で確認してください。住民税非課税世帯は所得金額にかかわらず1割です。40〜64歳の第2号被保険者は所得にかかわらず原則1割です。
「合計所得金額」と「年金収入」は別の概念なんですね。
そうです。合計所得金額は、収入そのものではなく、必要経費や各種控除を差し引いた後の所得額です。年金収入が年200万円あっても、合計所得金額は160万円を大きく下回ることがあります。年金以外の所得がある場合もあるため、正確な金額は確定申告書や市区町村から届く通知書で確認してください。
2割・3割の人は、全体の何割くらいいるんですか?
厚生労働省の資料では、2022年7月時点で2割負担は利用者の4.6%、3割負担は3.6%とされています。多くの方は1割負担ですが、不動産売却や一時的な高収入があった年の翌年は割合が上がることがあるため、毎年7月に届く負担割合証を必ず確認してください。
自己負担はいくら? — 区分別・負担割合別の目安
実際に親が介護保険サービスを使ったとき、月いくらくらいかかるんでしょうか?
要介護度によって利用できるサービスの上限額(区分支給限度基準額)が決まっています。その上限まで使った場合の自己負担額の目安を要介護度と負担割合別に整理しました。
| 要介護区分 | 限度基準額(月額) | 1割負担の目安 | 2割負担の目安 | 3割負担の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 要支援1 | 約50,320円 | 約5,000円 | 約10,000円 | 約15,000円 |
| 要支援2 | 約105,310円 | 約10,500円 | 約21,000円 | 約31,500円 |
| 要介護1 | 約167,650円 | 約16,800円 | 約33,500円 | 約50,300円 |
| 要介護2 | 約197,050円 | 約19,700円 | 約39,400円 | 約59,100円 |
| 要介護3 | 約270,480円 | 約27,000円 | 約54,000円 | 約81,000円 |
| 要介護4 | 約309,380円 | 約30,900円 | 約61,900円 | 約92,800円 |
| 要介護5 | 約362,170円 | 約36,200円 | 約72,400円 | 約108,600円 |
※ 限度基準額は概算。実際の利用額が限度を超えた分は全額自己負担になります。食費・居住費・日常生活費などは介護保険の対象外で別途かかります。施設サービスは別の区分が適用されます。
3割負担だと要介護3で月8万円以上かかることもあるんですね…。それは家計にかなり響きますね。
だからこそ、月額の自己負担に上限を設けた「高額介護サービス費」という制度があります。次のセクションで詳しく解説します。
高額介護サービス費 — 月額上限を超えたら払い戻される
高額介護サービス費ってどんな制度ですか?
同じ月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、世帯の上限を超えた場合、超えた分を後から払い戻してくれる制度です。令和3年8月に上限額が見直され、現在の基準が適用されています。
| 所得区分 | 月額上限(世帯) |
|---|---|
| 現役並み所得相当(年収約1,160万円以上) | 140,100円 |
| 現役並み所得相当(年収約770万円〜1,160万円) | 93,000円 |
| 現役並み所得相当(年収約383万円〜770万円) | 44,400円 |
| 一般(住民税課税世帯〜現役並み未満) | 44,400円 |
| 住民税非課税世帯(世帯全体) | 24,600円 |
| 住民税非課税世帯(個人:前年の年金収入+その他所得が年80万円以下の方等) | 15,000円 |
| 生活保護受給者等 | 15,000円 |
※ 同じ世帯で複数の方が介護保険を利用している場合は、合算して上限と比較します。食費・居住費・日常生活費・福祉用具購入費・住宅改修費は対象外です。
払い戻しはどうやって受けるんですか? 自動的に戻ってくるわけじゃないですよね?
初回は市区町村への申請が必要です。対象になる方には市区町村から申請書が郵送されてくることが多いですが、届かない場合は自分から窓口に問い合わせてください。一度申請して口座を登録すると、翌月以降は条件を満たした月に自動的に振り込まれます。
- 高額介護サービス費は申請しないと受け取れません。通知が届いていない場合も対象になっている可能性があります
- 申請の有効期間(時効)は2年間。過去2年分は遡って申請できます
- 施設入居中の方は、施設スタッフやケアマネジャーに申請状況を確認してください
- 負担割合が変わった月(毎年8月)は上限額も見直しになります
高額医療・高額介護合算療養費制度 — 医療と介護の年間合算
親が医療と介護の両方を使っているんですが、医療費と介護費を合わせた制度というのがあると聞きました。
それは「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。医療保険と介護保険の両方で自己負担がある世帯が、1年間(8月1日〜翌年7月31日)の合計負担額が限度額を超えた場合に、超えた分を払い戻してもらえる制度です。月ごとの上限を設ける高額介護サービス費とは別に、年間の上限として機能します。
| 所得区分(目安年収) | 70歳以上 | 70歳未満 |
|---|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 212万円 | 212万円 |
| 年収約770万円〜1,160万円 | 141万円 | 141万円 |
| 年収約370万円〜770万円 | 67万円 | 67万円 |
| 年収約156万円〜370万円(一般) | 56万円 | 60万円 |
| 市区町村民税非課税世帯 | 31万円 | 34万円 |
| 市区町村民税非課税世帯(所得が一定以下) | 19万円 | — |
※ 算定期間は毎年8月1日〜翌年7月31日。医療費の対象には食費・差額ベッド代・保険外の費用は含まれません。介護費の対象には居住費・食費・日常生活費・福祉用具購入費・住宅改修費は含まれません。70歳未満の方は1ヶ月2万1,000円以上の医療費のみ合算対象となります。
この制度も申請が必要ですか?
はい、申請が必要です。対象になりそうな方には市区町村や加入している医療保険から12月頃に通知が届く場合もありますが、届かないこともあります。「医療費と介護費の合計が多いな」と感じたら、加入している医療保険(国民健康保険・健保・後期高齢者医療など)の窓口か、市区町村に問い合わせてください。申請の期限は基準日(7月31日)の翌日から2年間です。
申請忘れに注意 — まとめと確認ポイント
高額介護サービス費も合算制度も、申請しないと戻ってこないんですね。気をつけないといけないですね。
介護保険の給付は「申請主義」が基本です。制度を知っていても申請しなければ一切払い戻されません。特に、施設に入所したばかりの方や、遠方に住む親の介護を始めたばかりの家族は見落としがちです。
- 高額介護サービス費: 初回は市区町村から申請書が届く場合が多いが、転居直後・施設入所後などは届かないこともある。ケアマネジャーに「申請しましたか?」と確認するのが確実
- 高額医療・高額介護合算療養費: 通知が届かないケースも多い。毎年8月〜翌年7月の1年が終わったタイミングで、医療費と介護費の合計を試算してみる
- 過去2年分は遡って申請可能: 「知らなかった」場合も2年以内なら取り戻せる。まずは市区町村の介護保険担当窓口に相談する
- 負担割合証の更新確認: 毎年7月に届く割合証を確認し、前年と変わっていないか必ずチェックする
自己負担の話、まとめてもらえますか?
整理すると、①介護保険の自己負担は原則1割で、所得に応じて2割・3割になる、②割合は毎年7月に更新される負担割合証で確認する、③同じ月の自己負担が上限を超えたら高額介護サービス費として払い戻される(初回要申請)、④医療費と介護費の合計が年間の限度を超えたら高額医療・高額介護合算療養費として払い戻される(要申請・2年以内)——この4点を押さえておきましょう。
関連するガイド
出典
- 厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」(令和3年8月改定) (参照: 2026-06-20)
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」 (参照: 2026-06-20)
- 厚生労働省「介護保険制度の解説(令和7年7月版)」 (参照: 2026-06-20)
- 厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」 (参照: 2026-06-20)