2025年の倒産は過去最多。ただし2026年に入って訪問介護は減っています
訪問介護の倒産が過去最多だというニュースを見ました。うちが頼んでいるところも危ないのでしょうか。
まず、その数字がいつのものかを確かめてください。よく引かれているのは東京商工リサーチが2026年1月9日に公表した「2025年『老人福祉・介護事業』倒産動向」で、2025年(1〜12月)の介護事業者の倒産が176件(前年比2.3%増)と2年連続で過去最多を更新した、というものです。内訳では訪問介護が91件(前年81件、12.3%増)で3年連続の最多更新、通所・短期入所が45件(前年56件)、有料老人ホームが16件(前年18件)でした。
それは、今も続いているということですか。
そこが大事なところで、2026年に入ってからの傾向は違います。同じ東京商工リサーチが2026年6月12日に公表した集計によると、2026年1〜5月の訪問介護事業者の倒産は31件で、前年同期比18.4%減。同じ期間としては5年ぶりに減少しました。同社はその背景として、ヘルパーの賃上げ支援などの効果が出たようだ、と書いています。一方でデイサービス(通所・短期入所介護事業)は27件(前年同期16件、68.7%増)と増えており、増減の向きがサービスの種類で分かれています。
| 集計期間 | 訪問介護 | 通所・短期入所(デイサービス等) | 公表日 |
|---|---|---|---|
| 2025年(1〜12月) | 91件(前年81件) | 45件(前年56件) | 2026年1月9日 |
| 2026年1〜5月 | 31件(前年同期比18.4%減) | 27件(前年同期16件) | 2026年6月12日 |
東京商工リサーチ「TSRデータインサイト」の2本の記事から作成しました。同社の集計は、介護保険制度が始まった2000年以降の「老人福祉・介護事業」を対象に、負債1,000万円以上の倒産を数えたものです。2026年1〜5月は5か月分で、2025年の欄は12か月分なので、縦に足したり比べたりはできません。なお、この集計は民間の調査会社によるもので、国の統計ではありません。
倒産のほかにも、静かに閉めるところがあると聞きました。
はい。倒産という形をとらずに事業をたたむ「休廃業・解散」のほうが、件数としては多くなっています。東京商工リサーチが2026年1月23日に公表した集計では、2025年の介護事業者の休廃業・解散は653件(前年比6.6%増)で4年連続の過去最多、うち訪問介護が465件でした。同社は、この集計を2010年(内訳は2013年)以降について行っていると注記しています。利用する側から見ると、倒産でも休廃業でも「使っていた事業所が無くなる」という点は同じなので、後の章で書く手順は両方に共通します。
- これらはいずれも民間の調査会社(東京商工リサーチ)が自社の基準で集計・公表したものです。国の統計ではないため、集計の範囲や基準は会社ごとに異なります
- 同社の倒産集計は「負債1,000万円以上」が対象です。それより小さい規模でやめた事業者は、この件数には入りません
- 件数は全国の合計です。お住まいの市区町村で何件だったかは、この数字からは分かりません
- 「過去最多」は2025年(暦年)の通年についての表現で、2026年に入ってからの向きは訪問介護とデイサービスで分かれています
訪問介護をしてくれるところ自体は減っていません — ただしサービスの種類で増減が分かれます
倒産が過去最多なら、訪問介護をしてくれるところ自体が減っているのでしょうか。
国の統計で見ると、そうはなっていません。厚生労働省の「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表、令和6年10月1日現在)によると、訪問介護は37,264事業所で、前年より359事業所(1.0%)増えています。通所介護は24,585事業所で前年より8事業所(0.0%)の増加、地域密着型通所介護は18,921事業所で235事業所(1.2%)の減少でした。訪問介護そのものが減っているわけではありませんが、サービスの種類によって増えているものと減っているものがあり、介護サービス全体をひとくくりに「増えている」とも「減っている」とも言えない、というのが国の統計に表れている姿です。
| サービス | 令和6年 | 令和5年 | 対前年 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 37,264事業所 | 36,905事業所 | 359事業所(1.0%)の増加 |
| 通所介護 | 24,585事業所 | 24,577事業所 | 8事業所(0.0%)の増加 |
| 地域密着型通所介護 | 18,921事業所 | 19,156事業所 | 235事業所(1.2%)の減少 |
| 居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所) | 37,258事業所 | 37,784事業所 | 526事業所(1.4%)の減少 |
厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」表1(基本票)から作成しました。各年10月1日現在で活動中の施設・事業所を集計したもので、複数のサービスを提供している事業所は各々に計上されています。
表の中には、減っているものもありますね。
はい。減っているほうでは、ケアマネジャーの事業所(居宅介護支援事業所)が37,258事業所で、前年より526事業所(1.4%)減っています。地域密着型通所介護も235事業所(1.2%)の減少でした。ここで挙げた4つは、調査の表に並んでいる30を超える区分のうちの4つなので、この4つを足し引きしても「介護サービス全体が増えたか減ったか」にはなりません。この記事でお伝えできるのは、サービスの種類ごとの増減までです。なお、ケアマネジャーの事業所は、サービスを別の事業所に替えるときの窓口になるところなので、そこ自体が閉じる場合にどう動くかは後の章で書きます。
37,000のうち91件なら、ほとんど関係ないということですか。
その割り算はできません。数えている単位が違うからです。厚生労働省が数えているのは「事業所」の数で、東京商工リサーチが数えているのは倒産した「事業者(企業)」の件数です。1つの会社が複数の事業所を持っていることもありますし、休廃業・解散のように倒産として数えられない終わり方もあります。2つの数字を割って「割合はこれくらい」と言うことはできないので、この記事でもしていません。
では、自分の地域はどうなのかを知りたいときは。
上の数字はすべて全国を集計したもので、お住まいの市区町村の状況とは別のものです。地域ごとの事業所の顔ぶれは、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で市区町村を指定して調べられます。ここには指定を受けている事業所が掲載されているので、近くにどのサービスの事業所がいくつあるかを見ることはできます。ただしそこに載っていることと、いま新しい利用者を受け入れる余力があるかどうかは別の話です。受け入れの可否は、事業所やケアマネジャーに直接確かめてください。
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事業所が閉じるときのルール — 1か月前までの届出と、引き継ぎの義務
ある日突然、明日から来ませんと言われることもあるのでしょうか。
法律は、そうならないように手順を定めています。介護保険法第75条第2項は、指定居宅サービス事業者(訪問介護や通所介護の事業者がこれにあたります)について、「当該指定居宅サービスの事業を廃止し、又は休止しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、その廃止又は休止の日の一月前までに、その旨を都道府県知事に届け出なければならない」と定めています。ケアマネジャーの事業所(指定居宅介護支援事業者)も同じで、同法第82条第2項が1か月前までに市町村長へ届け出ることを求めています。
届け出たあとは、利用者は自分で次を探すことになるのですか。
いいえ。事業者の側に、引き継ぎのための義務があります。介護保険法第74条第5項は、廃止・休止の届出をしたときは、届出の日の前1か月以内にそのサービスを受けていた人のうち、廃止・休止の日以後も引き続き同じようなサービスを希望する人に対して、「必要な居宅サービス等が継続的に提供されるよう、指定居宅介護支援事業者、他の指定居宅サービス事業者その他関係者との連絡調整その他の便宜の提供を行わなければならない」と定めています。ケアマネジャーの事業所についても、同法第81条第5項に同じ趣旨の規定があります。
| 訪問介護・通所介護などの事業所 | ケアマネジャーの事業所 | |
|---|---|---|
| 届出の期限 | 廃止・休止の日の1か月前まで(第75条第2項) | 廃止・休止の日の1か月前まで(第82条第2項) |
| 届出先 | 都道府県知事 | 市町村長 |
| 引き継ぎの義務 | 連絡調整その他の便宜の提供(第74条第5項) | 連絡調整その他の便宜の提供(第81条第5項) |
| 行政の関与 | 都道府県知事・市町村長が連絡調整や助言などの援助を行うことができる(第75条の2第1項) | 市町村長が連絡調整や助言などの援助を行うことができる(第82条の2第1項) |
| 引き継ぎをしない場合 | 都道府県知事が期限を定めて勧告できる(第76条の2第1項第4号) | 市町村長が期限を定めて勧告できる(第83条の2第1項第3号) |
介護保険法(平成9年法律第123号)の条文から作成しました。届出先については、同法第203条の2(大都市等の特例)により、都道府県が処理することとされている事務のうち政令で定めるものは指定都市・中核市が処理します。勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができ(第76条の2第2項、第83条の2第2項)、正当な理由なく措置をとらなかったときは命令ができる、という順に定められています。
それなら、必ず1か月前に知らせが来るということでしょうか。
そこは言い切れません。ここまでに挙げたのは、法律が事業者に求めていることです。実際には、資金が続かなくなって急に事業が止まる場合もあり、そのときに届出や引き継ぎがこの通りに進むとは限りません。ただ、手順が決まっていて、行政が間に入る仕組みがあることを知っておくと、連絡が来たときにどこへ言えばよいかが分かります。引き継ぎが行われていないと感じたときの連絡先は、訪問介護や通所介護であれば事業所の指定をしている都道府県(または指定都市・中核市)と、お住まいの市区町村です。
連絡が来たら、まずケアマネジャーへ。ケアマネの事業所が閉じるときは市区町村へ
実際に「閉めます」と言われたら、最初にどこへ連絡すればいいですか。
担当のケアマネジャー(居宅介護支援事業所)です。ケアプランを作っているのはケアマネジャーで、サービスを別の事業所に替えるときはケアプランの変更を伴います。前の章で見たとおり、閉じる側の事業者にはケアマネジャーとの連絡調整の義務があります(介護保険法第74条第5項)ので、多くの場合はケアマネジャーにも同時に話が行っています。すでに知っていることも多いので、まずは一報を入れて、次の候補を一緒に探してもらうのがいちばん早い道です。
そのケアマネジャーの事業所のほうが閉じてしまう場合は、どうすればいいのでしょう。
そのときは市区町村の介護保険課(高齢福祉の担当課)か、地域包括支援センターが窓口になります。居宅介護支援事業所の廃止・休止の届出先は市町村長ですし(第82条第2項)、引き継ぎが円滑に行われるよう連絡調整や助言を行うことができるのも市町村長です(第82条の2第1項)。要支援の方でご利用が介護予防ケアマネジメントの場合は、地域包括支援センターが直接の担当になっていることもあります。どちらに当たればよいか迷ったら、市区町村の介護保険課に電話をすれば振り分けてもらえます。
地域包括支援センターというのは、こういう相談もしていいところですか。
はい。介護保険法第115条の46第1項は、地域包括支援センターを、包括的支援事業などを実施して「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行う」ことを目的とする施設と定めています。ご本人からでも、離れて暮らすご家族からでも構いません。ただし設置するのは市町村または市町村から委託を受けた者で、守るべき基準も市町村の条例で定めることになっている(同条第2項・第3項・第5項)ので、開所日や受付時間は全国一律ではありません。親御さんの住所を担当するセンターの連絡先と開所日を、あらかじめ市区町村の公式サイトで確かめておいてください。
- いつまでサービスが続くのか(最終日)。介護保険法第75条第2項は廃止・休止の日の1か月前までの届出を求めていますが、実際の最終日は事業所に確かめてください
- 担当のケアマネジャーには、もう伝わっているのか。伝わっていなければ、こちらから一報を入れます
- 引き継ぎ先の心当たりがあるか。閉じる側には連絡調整の義務があります(第74条第5項)ので、候補を挙げてもらえることがあります
- 利用中の福祉用具や、預けている書類・鍵などをどう返すか
- 支払い済みの費用や、今後の請求がどうなるか
次の事業所は、自分でも探せますか。
候補を挙げるところまでは、ご自身でもできます。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で、市区町村とサービスの種類を指定して事業所を一覧できます。当サイトでも、市区町村ごとに地域包括支援センターや介護保険課の窓口をまとめたページを用意しています(掲載できている自治体はまだ一部です)。ただ、実際に受け入れられるかどうかは事業所ごとに、しかも時期によって変わります。この記事でも、どの事業所が受け入れ可能かまではお答えできません。候補を挙げるのはご自身、実際に当たって調整するのはケアマネジャー、という分担にすると話が早く進みます。
なぜ訪問介護で起きやすいのか — 事業者の規模という背景
そもそも、どうして訪問介護でこういうことが起きやすいのでしょうか。
東京商工リサーチが2026年1月9日に公表した集計を見ると、2025年に倒産した介護事業者176件のうち、従業員10人未満が142件(80.6%)、負債1億円未満が141件(80.1%)、資本金500万円未満(個人企業等を含む)が128件(72.7%)でした。同社はこれを「事業規模の小さい小・零細事業者がほとんどを占めている」とまとめています。倒産の原因としては売上不振が140件(79.5%)で約8割、「人手不足」倒産は29件(前年比45.0%増)でした。
小さい事業所が多い、ということですか。
訪問介護は、施設のような建物や設備を持たずに始められる分、小規模な事業者が多い分野です。厚生労働省の令和6年調査(令和6年10月1日現在)で経営主体の内訳を見ると、訪問介護は営利法人(会社)が73.2%と最も多く、次いで社会福祉法人が14.0%、医療法人が5.4%となっています。通所介護では営利法人55.0%・社会福祉法人34.0%で、比率が違います。規模が小さいほど、人手や費用の変動の影響を受けやすくなります。
利用者の側にできることは、あるのでしょうか。
事業所の経営状態を利用者が見抜くのは難しく、この記事でも「こういう事業所は危ない」といった見分け方はお伝えできません。できるのは、起きたときに慌てないための備えのほうです。担当のケアマネジャーの連絡先、市区町村の介護保険課の電話番号、親御さんの住所を担当する地域包括支援センターの名称と開所日。この3つを控えておくだけで、連絡が来た日の動きが変わります。事業所が替わっても、要介護認定や介護保険の給付そのものが無くなるわけではありません。替わるのはサービスを提供する相手であって、制度上の資格ではない、という点は押さえておいてください。
- 担当のケアマネジャーの氏名・事業所名・電話番号
- 市区町村の介護保険課(または高齢福祉の担当課)の電話番号
- 親御さんの住所を担当する地域包括支援センターの名称・電話番号・開所日時(市区町村の公式サイトに掲載されています)
- 介護保険の被保険者証と負担割合証を、家のどこにしまってあるか
- 現在利用しているサービスの種類・曜日・時間帯(ケアプランの控え)
関連するガイド
出典
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「2025年「介護事業者」倒産 過去最多の176件 「訪問介護」の倒産が突出、認知症GHも増加」(2026年1月9日公表。2025年の倒産176件・前年比2.3%増/訪問介護91件・前年81件/通所・短期入所45件/有料老人ホーム16件/売上不振140件79.5%/「人手不足」倒産29件・前年比45.0%増/従業員10人未満142件80.6%・負債1億円未満141件80.1%・資本金500万円未満128件72.7%/2000年以降、負債1,000万円以上を集計) (参照: 2026-09-07)
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「2025年「介護事業者」の休廃業・解散653件 苦境の「訪問介護」が押し上げ、過去最多を更新」(2026年1月23日公表。2025年の休廃業・解散653件・前年比6.6%増で4年連続の最多更新/訪問介護465件/通所・短期入所95件/有料老人ホーム23件/休廃業・解散は2010年(内訳は2013年)以降を対象) (参照: 2026-09-07)
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「1-5月の「デイサービス」倒産27件、上半期最多を更新 サービス多様化のなか、コスト上昇と人手不足が負担に」(2026年6月12日公表。2026年1〜5月のデイサービス倒産27件・前年同期16件/同期間の訪問介護は31件・前年同期比18.4%減で5年ぶりの減少) (参照: 2026-09-07)
- 厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和6年10月1日現在。表1 施設・事業所数:訪問介護37,264事業所・前年比359事業所1.0%増/通所介護24,585事業所・8事業所0.0%増/地域密着型通所介護18,921事業所・235事業所1.2%減/居宅介護支援事業所37,258事業所・526事業所1.4%減。表5 経営主体別事業所数の構成割合:訪問介護は営利法人(会社)73.2%・社会福祉法人14.0%・医療法人5.4%、通所介護は営利法人55.0%・社会福祉法人34.0%) (参照: 2026-09-07)
- 厚生労働省 報道発表資料「令和6(2024)年「介護サービス施設・事業所調査」の結果を公表します」(令和7年12月19日付。毎年10月1日現在の状況について調査を実施している旨と、調査結果のポイント) (参照: 2026-09-07)
- e-Gov 法令検索「介護保険法」(平成9年法律第123号)第74条第5項(廃止・休止の届出をしたときの連絡調整その他の便宜の提供)、第75条第2項(廃止・休止の日の一月前までに都道府県知事へ届出)、第75条の2第1項(都道府県知事・市町村長による連絡調整又は援助)、第76条の2第1項第4号・第2項(便宜の提供を適正に行っていない場合の勧告と公表)、第81条第5項・第82条第2項・第82条の2第1項・第83条の2第1項第3号(指定居宅介護支援事業者についての同趣旨の規定)、第115条の46第1項・第2項・第3項・第5項(地域包括支援センター)、第203条の2(大都市等の特例) (参照: 2026-09-07)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」(市区町村とサービスの種類を指定して、指定を受けている事業所を検索できる) (参照: 2026-09-07)