介護のいまを読むコラム

熱中症で運ばれた6割は高齢者、いちばん多い場所は「住居」でした — この夏すでに7万3千人

「うちの親は外に出ないから大丈夫」と思っている方に、いちど見ていただきたい数字があります。熱中症で救急車を呼ぶことになった場所は、道路でも仕事場でもなく、住居がいちばん多い。しかも運ばれた方の6割前後は65歳以上です。2026年の夏はまだ終わっていません(熱中症警戒アラートの運用は10月21日まで)。今日から電話1本でできることを、消防庁と環境省、厚生労働省の資料から整理します。

更新: 2026-09-03

この夏すでに73,373人 — その6割が高齢者、いちばん多い場所は「住居」

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

実家の母が一人暮らしなんですが、「エアコンは苦手だから」と言って、あまり付けたがらないんです。本人は元気そうなので、そこまで心配していなかったのですが……。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

いちばん新しい数字を先にお見せします。消防庁の速報値では、2026年5月1日から8月30日までに熱中症で救急搬送された方が全国で73,373人いました。このうち65歳以上が43,815人(59.7%)です。直近の1週間(8月24日〜30日)だけでも4,812人が運ばれ、そのうち65歳以上が2,815人(58.5%)でした。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

この夏だけで7万人を超えているんですか。6割が高齢者というのは、思っていたより多いですね。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

そして、いちばんお伝えしたいのは発生場所です。この夏の累計では、住居が29,264人(39.9%)で最も多く、次いで道路15,291人(20.8%)、駅(屋外ホーム)や競技場などの不特定の人が出入りする屋外が7,984人(10.9%)でした。直近の1週間で見ても、住居が1,721人(35.8%)で最多です。

熱中症による救急搬送の発生場所(2026年5月1日〜8月30日の累計、全国・速報値)
発生場所人数割合
住居(敷地内すべてを含む)29,264人39.9%
道路15,291人20.8%
公衆(屋外)7,984人10.9%
仕事場①(道路工事現場・工場・作業所等)7,095人9.7%
公衆(屋内)6,008人8.2%
その他4,203人5.7%
教育機関2,199人3.0%
仕事場②(田畑・森林・海・川等)1,329人1.8%
合計73,373人100.0%

総務省消防庁「全国の熱中症による救急搬送状況 令和8年8月24日〜8月30日(速報値)」の都道府県別累計表(令和8年5月1日〜8月30日)より。速報値のため、後日公表される確定値とは一致しないことがあります(同資料の週別推移では、5月1日〜7月26日が確定値、7月27日以降が速報値と区別されています)。消防庁の区分では「住居」は「敷地内全ての場所を含む」と定義されています(庭やベランダ、駐車場での発生も区分上は住居に入ると読めますが、具体例の列挙は原典にはなく、この記事の読み取りです)。四捨五入のため割合の合計は100%にならないことがあります。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

4割が家の中……。外に出ないから安全、というわけではないんですね。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

「暑い日は外出を控える」という呼びかけは正しいのですが、控えた先が涼しいとは限らないのです。そこが見落とされやすいところです。

去年の夏は搬送10万人で過去最多 — 今年だけの話ではありません

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

今年がたまたま暑い、ということもあるのでしょうか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

去年の確定値を見ると、たまたまとは言いにくい状況です。2025年(令和7年)5月から9月の熱中症による救急搬送は全国で100,510人、調査を開始した2008年(平成20年)以降で最も多い人数でした。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

では今年は、去年よりさらに多いのでしょうか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

そこは正確にお伝えします。いま見ている消防庁の週報には、前年の同じ期間と並べたグラフが付いています(都道府県別の累計グラフの凡例)。それによると、同じ5月1日から8月30日までで、去年(令和7年)が89,857人、今年(令和8年)は73,373人。今年のほうが少なくなっています。ただしこの資料自身が、去年の数字を「確定値」、今年の数字を「速報値」と分けて書いています。取り方が違うので、この差をそのまま「今年は減った」と読むことはできません。それでも、今年もこの夏だけで7万3千人の方が運ばれています。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

もう9月ですが、そろそろ落ち着くと考えてよいのでしょうか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

去年の確定値を見ると、9月で終わりとは言えません。令和7年の5月〜9月の累計10万510人のうち、9月だけで9,766人が運ばれています。消防庁は同じ資料の概要で「6月が過去最多、9月が過去2番目の搬送人員となりました」としています(調査は平成20年から)。今年の熱中症警戒アラートの運用も10月21日までです。

熱中症による救急搬送の内訳(2025年5月〜9月、全国・確定値)
区分人数割合
搬送人員の合計100,510人—
うち高齢者(65歳以上)57,433人57.1%
うち成人(18歳以上65歳未満)34,096人33.9%
発生場所:住居38,292人38.1%
発生場所:道路19,773人19.7%
初診時:軽症(外来診療)63,447人63.1%
初診時:中等症(入院診療)34,399人34.2%
初診時:重症(長期入院)2,217人2.2%
初診時:死亡117人0.1%

総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」(2025年10月29日公表)より。発生場所別で住居は5年続けて最多です(2021年39.4%、2022年39.5%、2023年39.9%、2024年38.0%、2025年38.1%)。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

毎年、住居がいちばん多いんですね。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

はい。ただ、ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。消防庁が公表しているのは「年齢区分別」と「発生場所別」をそれぞれ別に集計した数字で、「高齢者だけを取り出したときの発生場所の内訳」は公表されていません。ですから「高齢者の何割が家の中で倒れている」という言い方は、この資料からはできません。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

そこは分けて考えないといけないんですね。では、高齢者と家の中の関係は、何を見れば分かるのでしょうか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

亡くなった方の記録が残っている地域があります。次にそちらを見ます。

いい介護で入居先を相談する(広告) 笑顔で暮らせる住まいがきっと見つかる【いい介護】 相談無料。施設探しを始めたい方へ。

東京23区で亡くなった方の記録 — 9割超が屋内、エアコンは「あるのに使われていなかった」

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

東京都監察医務院が、東京23区で亡くなった方について毎年まとめを公表しています。2025年(令和7年)の夏期(6〜9月)、熱中症で亡くなった方は193人。このうち屋内が181人(93.8%)、屋外は12人でした。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

9割以上が屋内ですか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

そして屋内で亡くなった181人のエアコンの状況が、この資料のいちばん重いところです。

屋内で亡くなった方(181人)のエアコンの設置・使用状況(2025年夏期・東京23区)
状況人数割合
エアコンの設置あり149人82.3%
 うち 使用していた28人15.5%
 うち 使用していなかった121人66.8%
エアコンの設置なし23人12.7%
不明9人5.0%

東京都監察医務院「令和7年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】」(2026年6月19日更新)より。同資料は「屋内で亡くなられた方の大半は、設置が無い場合及び故障の場合も含めて、エアコンが使われていなかった」としています。また、屋内で亡くなった181人のうち152人が単身住まい、29人が家族と同居でした。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

設置されているのに使っていなかった方が121人……。うちの母と同じです。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

しかも屋内で亡くなった181人のうち152人が単身住まいでした。「一人で、家の中で、エアコンがあるのに動いていない」という形が、記録の上ではいちばん多いのです。

この数字を読むときの注意
  • これは東京23区で監察医務院が取り扱った事例の集計です。全国の数字ではありませんし、お住まいの市区町村の状況を表すものでもありません
  • 23区は単身の高齢世帯の割合が高く、監察医務院が扱うのは主に自宅などで亡くなった事例です。全国にそのまま当てはめられる数字ではありません
  • 一方で「屋内・エアコン不使用」という傾向は、消防庁の全国データで住居が最多であることと矛盾しません。地域ごとの状況は、お住まいの自治体の発表を確認してください

「暑いと感じない」のは我慢ではなく、体のしくみです

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

何度言っても「そんなに暑くない」と言うんです。強情なだけかと思っていました。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

そこは、性格の問題として片づけないほうがいいところです。厚生労働省と環境省が2026年4月1日付で市区町村の介護保険担当部局などに出した事務連絡「熱中症対策のための高齢者への見守り・声かけについて」には、高齢者が熱中症になりやすい身体的な特性として、次のことが挙げられています。

高齢者が熱中症になりやすい理由(厚生労働省・環境省の事務連絡より)
  • 「暑い」と感じにくくなる
  • 暑さに応じて行動を変えること(行動性体温調節)が鈍る
  • 汗の量・皮膚の血流量が増えるまでに時間がかかる
  • 汗の量・皮膚の血流量そのものが減る
  • 体内の水分量が減る
  • のどの渇きを感じにくくなる
佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

「暑いと感じにくくなる」と国の文書に書いてあるんですね。それなら、本人の申告を待っていてはいけないということですか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

同じ事務連絡でも、そう整理されています。「自ら熱中症予防行動をとることが難しい場合がある」ことを理由に、周りからの見守り・声かけへの協力を関係団体・事業者に依頼したものです。呼びかけの例としては、のどが渇かなくても早めに水分・塩分をとること、温湿度計などで室温を確かめること、エアコンを積極的に使い、風が直接肌に当たらないようにすることなどが挙げられています。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

なお、高血圧症や糖尿病などの持病があって治療中の方の水分・塩分のとり方については、この事務連絡も「かかりつけ医や主治医とあらかじめ相談を」としています。個々の体調に合った量は、この記事では判断できません。必ず主治医にご確認ください。

離れて暮らす家族が、今日からできること

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

帰省できるのは秋になりそうです。それまでにできることはありますか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

電話でできることから挙げます。まず、熱中症警戒アラートを家族側で確認して、発表された日に連絡を入れる。環境省の熱中症予防情報サイトで見られますし、LINEの環境省公式アカウントやメール配信でも受け取れます。

熱中症警戒アラートと熱中症特別警戒アラートの違い(2026年度)
熱中症警戒アラート熱中症特別警戒アラート
発表の単位全国を58に分けた府県予報区等都道府県
発表の基準区域内のいずれかの地点で、翌日または当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33以上と予測されるとき都道府県内のすべての地点で、翌日の日最高暑さ指数が35以上と予測されるとき
発表の時間前日の午後5時と当日の午前5時前日の午後2時
2026年度の運用期間4月22日〜10月21日4月22日〜10月21日

表の内容は環境省「令和8年度熱中症特別警戒アラート及び熱中症警戒アラートの運用を開始します」(2026年4月14日報道発表)より。特別警戒アラートは、気候変動適応法の改正で創設された「熱中症特別警戒情報」の通称です(同法が令和5年4月に改正され、令和6年4月に全面施行されたことは、厚生労働省・環境省の事務連絡に記載されています)。なお特別警戒アラートの基準について、同法施行規則の別表で除かれる地点があります。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

アラートが出た日に電話する、というのは分かりやすいです。ほかにはどうでしょう。

電話や次の帰省でできる確認
  • 居間と寝室に温湿度計があるか。ない場合は送る(「暑い」と感じにくくなるため、数字で見えるようにする)
  • エアコンが実際に動くか。設置されていても故障していれば使えない。前章で見た東京都監察医務院の同じページにも、「熱中症を防ぐために」として「夏が来る前に、エアコンが故障していないか確認しましょう」と書かれています
  • 電気代を気にして付けていないのか、リモコンの操作が分からないのかを聞き分ける。理由が違えば手当ても変わります
  • 熱中症警戒アラートが出た日に、水分をとったか・室温は何度かを具体的に聞く(「大丈夫?」と聞くと「大丈夫」と返ってきます)
佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

電気代のことは、たしかに言いにくそうにしていました。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

そこは、地域によって支援の有無が分かれるところです。エアコンの購入費用の助成や、暑い日に涼みに行ける施設(クーリングシェルター、法律上の名称は指定暑熱避難施設)の開放は、行っているかどうかも、内容も、市区町村ごとに違います。この記事では「お住まいの市区町村にあるかどうか」までは分かりません。お住まいの市区町村の高齢福祉担当窓口か、地域包括支援センターにご確認ください。

佐藤 ゆみこ(親の介護を検討中の家族)
佐藤 ゆみこ
親の介護を検討中の家族

地域包括支援センターには、こういうことでも相談していいんですか。

林 ちあき(まちの介護施設 編集部)
林 ちあき
まちの介護施設 編集部

はい。高齢の方の暮らし全般の相談窓口です。夏の見守りや安否確認の仕組みを持っている自治体もあります。介護保険のサービスをまだ使っていない段階でも、家族からの相談で構いません。

様子がおかしいときは、判断を待たない(環境省「熱中症環境保健マニュアル ~総論~」より)
  • 会話ができない、呼びかけに反応がない場合は「とても危険な状態」とされています。ためらわず、すぐに救急車(119番)を呼んでください
  • 呼びかけには応えるものの、自力で水分がとれない場合。または水分・塩分を補給しても症状がよくならない場合。どちらもすみやかに医療機関へ、とされています
  • 呼びかけへの反応が悪いときに、無理に水を飲ませてはいけないとされています
  • 呼ぶかどうか迷うときは、救急安心センター事業「#7119」に電話できます。ただし全国どこでも使えるわけではなく、総務省消防庁のページには「現在、全国41地域で実施しています」とあります(2026年9月3日時点で確認。実施地域は増えていく可能性があるので、お住まいの地域で使えるかは同ページの一覧でご確認ください)
  • この記事は統計と公的資料の整理です。目の前の方の状態を判断するものではありません

関連するガイド

出典