介護のはじまりガイド
グループホームとは? — 認知症の人が暮らす少人数施設の特徴と費用
「認知症と診断されたけど、自宅介護はもう限界かもしれない。でも大きな施設に入れるのは心配——」。そんな思いを抱えている方にとって、グループホームは有力な選択肢のひとつです。グループホームは少人数の家庭的な環境で、認知症の方が職員と一緒に料理や掃除をしながら暮らす施設です。この記事では、入居条件・費用・1日の流れ・特養との違い・退去リスクまで、見学前に知っておきたいことを整理します。
公開: 2026-06-21
グループホームとは — 認知症の人のための家庭的な住まい
母が先月、認知症と診断されました。今は自宅で介護しているんですが、「グループホーム」という施設があると聞きまして——どんな施設なんでしょうか?
グループホームの正式名称は「認知症対応型共同生活介護」です。認知症と診断された方が、少人数(1ユニット最大9人)で共同生活を送りながら介護を受ける施設で、介護保険法に基づく地域密着型サービスのひとつです。
「地域密着型」というのは、どういう意味ですか?
施設が所在する市区町村の住民しか利用できないサービスのことです。引越してまで入れる、といった使い方ができない点が特徴のひとつです。逆に言えば、地元の顔なじみのコミュニティで暮らし続けられるという良さもあります。
- 正式名称: 認知症対応型共同生活介護
- 根拠法: 介護保険法(地域密着型サービス)
- 規模: 1ユニット5〜9人、1施設あたり最大3ユニット(最大27人)
- スタッフ: 日中は入居者3人に対し1人以上の介護職員を配置、夜間も1人以上が常駐
- 特徴: 料理・掃除・洗濯など日常的な家事を職員と一緒に行う「家庭的なケア」
入居条件 — 認知症診断と要支援2以上 + 地域要件
グループホームに入るには、どんな条件が必要なんでしょうか? 認知症ならだれでも入れるわけではないですよね?
はい、いくつかの条件があります。大きくは①認知症の診断、②要介護度、③住民票の所在地の3つです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 認知症の診断 | 医師による認知症の診断書(または診断)が必要。認知症の原因疾患は問われない(アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性など) |
| 要介護度 | 要支援2または要介護1〜5。要支援1は対象外 |
| 住民票の所在地 | 施設が所在する市区町村に住民票があること(地域密着型サービスの制約) |
| 集団生活への適応 | 共同生活が可能な状態であること(集団生活が著しく困難な方は対象外となる場合がある) |
※ 要支援2の方が利用できるのは「介護予防認知症対応型共同生活介護」です。内容はほぼ同じですが、ケアプランは地域包括支援センターが作成します。
「集団生活が著しく困難」というのは、具体的にどんな状態でしょうか?
グループホームは少人数とはいえ共同生活の場なので、他の入居者に危害を加えるリスクが高い状態や、寝たきり・医療依存度が高い状態では受け入れが難しい場合があります。また、感染症の急性期や意識障害がある状態での入居も難しいです。認知症の進行度よりも「生活の場として成立するか」が判断基準になります。
- グループホームは施設所在の市区町村の住民のみが利用できます
- 住民票を移せば入居資格を得られますが、認定した市区町村と異なる市区町村の施設を使う場合は要介護認定の引き継ぎ手続きが必要です
- 「人気施設が隣の市にある」という場合は、まず住民票の異動を検討してください(市区町村の窓口へ相談を)
特徴と1日の流れ — 入居者自身も家事を担う
グループホームの一番の特徴って何ですか? 普通の老人ホームとどこが違うんでしょう?
最大の特徴は「入居者が職員と一緒に家事をする」点です。特養や有料老人ホームでは職員が全てのケアを提供しますが、グループホームでは、できる範囲で本人が料理・掃除・洗濯などを担います。認知症の方でも、なじみのある家事を通じて役割感や生きがいを感じ、残存機能の維持につながると考えられています。
認知症なのに料理や掃除ができるんですか?
認知症の方でも、長年の習慣として身についている動作は比較的保たれやすいのです。「昔から料理が好きだった方が、職員の補助を受けながら一緒にお味噌汁を作る」といった形です。全員が全ての家事をするわけではなく、その方が「できること」「したいこと」に合わせてスタッフが関わり方を調整します。
| 時間帯 | 過ごし方の例 |
|---|---|
| 7:00〜8:00 | 起床・洗顔・着替えの介助。できる方は自分でトイレや洗面 |
| 8:00〜9:00 | 朝食(職員と一緒に配膳の手伝いをする方も) |
| 9:00〜11:30 | 散歩・体操・掃除・洗濯のお手伝いなど。個別のリハビリや機能訓練も |
| 11:30〜13:00 | 昼食の準備(一緒に野菜を切るなど)と昼食。食後に薬の服用 |
| 13:00〜15:00 | 昼休み・入浴介助(週2〜3回)。読書・テレビ・個別の趣味活動など |
| 15:00〜17:00 | おやつ・レクリエーション(季節の行事や手工芸など) |
| 17:30〜18:30 | 夕食の準備と夕食 |
| 19:00〜21:00 | 入浴(夕方入浴の施設も)・就寝前の準備 |
| 夜間 | 職員が1人以上常駐。夜間対応(トイレ誘導・体位変換など) |
※ 施設ごとにスケジュールは異なります。見学時に実際のスケジュールを確認してください。
夜間も職員がいてくれるなら、安心ですね。何かあったときにはすぐ対応してもらえる?
はい。グループホームは夜間も職員が1人以上常駐することが法令で義務づけられています。転倒・徘徊・急な体調変化などに対応できる体制です。ただし、医師の常駐はありませんので、医療行為が必要な緊急時は救急搬送になります。医療依存度の高い方との相性については後の章でも触れます。
費用 — 月額12〜18万円 + 入居一時金0〜数十万
費用面が一番気になります。毎月どのくらいかかるものなんでしょうか?
施設や地域によって差がありますが、月額の総額は12〜18万円程度が目安です。介護保険サービス費(1〜3割負担)に加えて、食費・居住費・日用品費などの実費が加わります。
| 費用項目 | 月額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 介護サービス費(1割負担の場合) | 約2〜3万円 | 要介護度と地域区分で変動。地域密着型サービス費が適用される |
| 食費 | 約4〜5万円 | 1日3食の食材費と調理費。施設によって異なる |
| 居住費(家賃相当) | 約3〜7万円 | 立地・設備・個室の広さで大きく差がある |
| 日用品・消耗品費 | 約5,000〜1万円 | おむつ代・洗剤・その他消耗品 |
| その他(レクリエーション費等) | 0〜1万円 | 施設によって実費請求 |
| 合計(目安) | 約12〜18万円/月 | 所得に応じて介護サービス費の負担割合は1〜3割 |
※ 上記はあくまで目安です。施設により食費・居住費の設定が大きく異なります。実際の費用は施設の重要事項説明書で必ず確認してください。
入居一時金というのはどのくらいかかるんですか?
施設によって0円〜数十万円と幅があります。有料老人ホームと比べると入居一時金のないグループホームも多いですが、「前払い家賃」として数十万円を求める施設もあります。入居時に必要な費用は重要事項説明書に記載されているので、見学時に必ず確認してください。
- 介護保険負担限度額認定制度を利用すると、低所得者の食費・居住費の自己負担を軽減できます
- 市区町村に申請し、認定を受けると食費・居住費が段階的に減額されます
- 対象となるのは本人と配偶者が住民税非課税で、預貯金等が一定基準以下の方です
- 詳しくは市区町村の介護保険担当窓口またはケアマネジャーへご相談ください
特養・有料老人ホームとの違い
グループホームのほかに「特養(特別養護老人ホーム)」や「有料老人ホーム」も選択肢として聞きます。どう違うんでしょうか?
大きく3つの観点で比べると分かりやすいです。規模・認知症対応の専門性・費用と入居のしやすさです。
| 観点 | グループホーム | 特養(特別養護老人ホーム) | 介護付き有料老人ホーム |
|---|---|---|---|
| 規模 | 少人数(1ユニット5〜9人) | 大規模(数十〜百数十人が多い) | 規模は様々(小規模〜大規模まで) |
| 認知症対応 | 認知症専門(入居要件に認知症の診断が必要) | 認知症の方も多いが専門施設ではない | 認知症ケアに力を入れる施設もあるが、専門性は施設による |
| 医療体制 | 医師常駐なし(提携医が定期訪問)。医療依存度が高い方は難しい場合も | 医師・看護師が配置。医療ケアへの対応度は特養より高い | 施設によって異なる。24時間看護師配置の施設もある |
| 費用(月額目安) | 12〜18万円程度 | 6〜13万円程度(公的施設のため低め) | 15〜40万円程度(設備・サービス水準で大きく差あり) |
| 入居のしやすさ | 待機は比較的短い場合が多い。要支援2から入れる | 要介護3以上が入居要件。全国的に待機者が多い | 待機は少ない施設が多い。費用が高めの傾向 |
| 生活スタイル | 家庭的・家事参加。9人以下の少人数 | 集団生活。個室ユニット型も増加中 | 施設の種類により差あり |
※ 費用はあくまで目安です。施設の立地・設備・サービス内容によって大きく変わります。
特養は費用が安いんですね。グループホームよりも特養に入れた方がいいですか?
費用だけで比べると特養が安くなる傾向はありますが、特養は要介護3以上でないと原則入居できませんし、待機者が多く、入居まで数年かかることも珍しくありません。認知症の方で要介護1〜2の段階であれば、グループホームの方が現実的な選択肢になることが多いです。また、少人数で認知症に特化した専門ケアが受けられる点はグループホームの大きな強みです。
入居・退去の現実 — 認知症進行で退去になることも
グループホームに入居したとして、ずっとそこで暮らし続けられるんでしょうか?
これは正直にお伝えしたい部分なのですが、認知症が進行した段階で退去を求められるケースがあります。グループホームは「家庭的な共同生活が可能な方」を前提にした施設なので、寝たきり状態・医療依存度の高い状態・他の入居者に危害が及ぶ状態になった場合、対応できなくなることがあります。
- 退去になり得る主な状況: 重度の寝たきり・医療的処置が常時必要な状態・経管栄養・気管切開・点滴管理などへの対応不可
- 退去後の行き先: 特養・医療型施設(介護医療院)・老健などへの転居が必要になります
- 看取り対応の有無: 施設によっては看取りまで対応するグループホームもあります。見学時に「最期まで看てもらえるか」を必ず確認してください
- 退去ルールを確認: 退去条件・退去予告期間・退去後の費用精算などは契約書に記載されています。必ず事前に確認を
退去になったとき、次の施設をすぐに見つけられるか不安です。
その不安はもっともです。入居時から「もし退去になったときにどうするか」のプランBを家族で考えておくことをおすすめします。ケアマネジャーに「特養の申し込みも並行してしておく」「医療型施設の情報を集めておく」といった相談をしておくと安心です。グループホーム入居後もケアマネジャーとの連携は続けることが大切です。
見学のチェックリストと次の一歩
いくつか見学に行こうと思っているんですが、どんな点を見ればいいんでしょうか?
ポイントは「数字や制度ではなく、その場の雰囲気と職員の関わり方」を見ることです。資料やパンフレットでは分からない部分が、見学では見えてきます。
| 確認項目 | チェックの視点 |
|---|---|
| 職員の声かけ | 入居者に対して「〇〇さん、今日はどうですか?」と名前で呼びかけているか。高圧的・大声な対応がないか |
| 入居者の表情・雰囲気 | 入居者が穏やかに過ごしているか。表情がこわばっていないか。笑顔や会話が見られるか |
| 食事の場面(可能であれば) | 食卓を囲んで一緒に食べているか。食事介助の丁寧さ。食事の量・内容 |
| 共有スペースの居心地 | リビングが生活感のある場所になっているか。テレビが常時つけっぱなしではなく、入居者に合わせた活動があるか |
| 退去・看取りのポリシー | 「どんな状態になったら退去をお願いするか」を具体的に答えてもらえるか。看取り対応の実績と方針 |
| 夜間体制 | 夜間の職員配置人数。緊急時の対応フロー(救急搬送の際の家族連絡など) |
| 入居者の要介護度構成 | 現在の入居者のおおよその要介護度。自分の親と近い方が多いか |
| 費用の透明性 | 重要事項説明書を見せてもらえるか。追加費用が発生するケースを具体的に説明してもらえるか |
※ 見学は平日の昼間(食事や活動が見やすい時間帯)に複数施設を比較することをおすすめします。
いくつか候補を絞って見学に行ってみます。他にも関連する記事を読んで、全体像を理解してから動きたいと思っています。
施設を探す前に、まず他の選択肢と比べておくと判断しやすくなります。特養の詳細は特別養護老人ホーム(特養)とは、有料老人ホームについては有料老人ホームとはで詳しく解説しています。施設の種類全体を比較したい方は老人ホームの種類と違い一覧も参考にしてください。費用面で気になる方は老人ホームの費用相場も合わせてご覧ください。
- ①ケアマネジャーに相談: 担当ケアマネがいれば、地域のグループホームの情報を持っています。まず相談を
- ②介護サービス情報公表システムで検索: 厚生労働省の公式サイトで、都道府県・市区町村・サービス種別を選んで施設を検索できます
- ③地域包括支援センターへ相談: ケアマネが決まっていない方は、お住まいの地域の地域包括支援センターへ。施設探しのアドバイスをもらえます
- ④複数施設を見学: 最低2〜3施設は見学し、上記のチェックポイントで比較を
- ⑤体験入居を活用: 多くのグループホームで数日〜1週間の体験入居が可能です。本人の適応を確認してから決めることをおすすめします
関連するガイド
出典
- 厚生労働省「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)について」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「地域密着型サービス」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「介護保険制度の解説」(令和7年版) (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「認知症施策推進大綱」 (参照: 2026-06-21)