介護のはじまりガイド
老人ホームの費用相場 — 月額・入居一時金・隠れコストを施設種別で比較
「施設の費用がどれくらいかかるのか、月額以外にも色々かかると聞いて怖い」——そう感じている方は少なくありません。老人ホームの費用は、①毎月かかる「月額費用」、②入居時にまとめて払う「入居一時金」、③明細に出にくい「隠れコスト」の3層で成り立っています。施設の種類によって費用の構造がまったく異なるため、単純に比較できないのが難しいところです。この記事では施設種別ごとの費用相場を整理したうえで、月額の内訳・入居一時金の仕組み・隠れコストの実態・費用を抑える公的制度までを順番に解説します。
公開: 2026-06-21
費用の全体像 — 月額・入居一時金・隠れコストの3層で考える
母の施設入居を検討しているんですが、パンフレットを見ても費用がよくわからなくて。「月額○万円〜」と書いてあっても、それ以外にもかかりそうで怖いんです。
費用が分かりにくく感じるのは当然です。老人ホームの費用は大きく3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。①毎月かかる「月額費用」、②入居時に払う「入居一時金」、③明細に出てこない「隠れコスト」の3層です。
- ① 月額費用: 介護保険自己負担 + 食費 + 居住費(家賃)+ 日常生活費。毎月の請求に含まれる
- ② 入居一時金: 入居時に一括で払う費用。特養は0円、民間有料老人ホームは0〜数千万円と施設によって大きく差がある
- ③ 隠れコスト: 月額に含まれない医療費・オムツ代・個別ケア追加料金など。月1〜5万円追加になるケースが多い
施設の種類によって費用の仕組みが違うんですか?
はい、公的施設(特養・老健など)と民間施設(有料老人ホームなど)では費用の構造が根本的に違います。公的施設は介護保険の報酬が中心なので月額が比較的低く、入居一時金もほぼありません。民間施設は月額が高めですが、サービスや設備が充実しているのが特徴です。まず施設種別ごとの月額相場を確認しましょう。
施設種別ごとの月額費用の相場
特養と有料老人ホームで月額がこんなに違うんですね。どうして公的施設はそんなに安いんですか?
公的施設は介護保険と公費で大部分をまかなっているため、利用者の自己負担が抑えられています。一方、民間施設はサービス・設備への投資を月額費用で回収する仕組みなので高くなります。また月額には「居住費」が含まれますが、公的施設の居住費は所得に応じた「負担限度額認定」で大幅に安くなる制度があります(後ほど解説します)。
| 施設種別 | 月額目安(全国平均レンジ) | 首都圏の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 8万〜15万円 | 10万〜18万円 | 公的施設。要介護3以上が原則。待機が長い |
| 介護老人保健施設(老健) | 8万〜20万円 | 10万〜22万円 | 公的施設。リハビリ中心、原則3〜6か月の在宅復帰目的 |
| 介護付き有料老人ホーム | 15万〜35万円 | 20万〜45万円 | 民間施設。介護スタッフ常駐、重度対応可 |
| 住宅型有料老人ホーム | 12万〜25万円 | 15万〜30万円 | 民間施設。介護サービスは外部利用 |
| グループホーム(GH) | 12万〜18万円 | 14万〜22万円 | 認知症専門。少人数ケア(定員9〜18名) |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 10万〜25万円 | 13万〜30万円 | 賃貸型。介護は外部サービス利用が基本 |
※ 月額は介護保険自己負担(1割)・食費・居住費・日常生活費の合計目安。要介護度・居室タイプ・所得等によって変わります。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)は全国平均より2〜5万円程度高い傾向があります。出典:公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査(2022年度)」・各施設運営会社公表データを参考に編集部作成
同じ特養でも8万円と15万円ではずいぶん差がありますね。何がそんなに違うんでしょう?
主に居室タイプと要介護度で変わります。多床室(相部屋)は居住費が抑えられますが、ユニット型個室は居住費が上がります。また要介護度が高いほど介護保険の自己負担が増えます。加えて、所得の高い方は食費・居住費の補助が受けられないため、月額が高くなります。
入居一時金の仕組みと90日クーリングオフ
有料老人ホームの案内に「入居一時金500万円」と書いてあって驚きました。これは何のために払うお金なんですか?
入居一時金は「居室の利用権を得るための前払い家賃」だと考えると理解しやすいです。入居後の月額居住費の一部または全部を入居時に前払いしたもので、月数が経つにつれて「償却」(費用として消化)されていく仕組みです。施設によってゼロ円から数千万円まで幅があります。
| 施設種別 | 入居一時金の目安 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 0円 | 公的施設のため入居一時金なし |
| 介護老人保健施設(老健) | 0円 | 公的施設のため入居一時金なし |
| 介護付き有料老人ホーム | 0円〜数千万円 | 0円プランもある。月額が高めになる傾向 |
| 住宅型有料老人ホーム | 0円〜1,000万円程度 | 0円プランが増えている。選択肢が広い |
| グループホーム(GH) | 0円〜数十万円 | 比較的少額。敷金程度のところが多い |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 数十万円(敷金) | 賃貸借契約のため敷金。償却なし(返還される) |
※ 同じ施設でも「入居一時金なし・月額高め」「入居一時金あり・月額低め」の複数プランを設定している場合があります。長期入居を予定しているなら入居一時金ありのプランが有利になることもあります。
- 初期償却: 入居直後に一定割合(例:10〜30%)を即時費用計上する。入居後すぐに退去・死亡した場合でも返還されない部分
- 月割償却: 残額を想定入居期間(5〜15年が多い)で月割りして毎月消化する
- 90日クーリングオフ(入居後3か月ルール): 有料老人ホームは入居後90日以内に退去した場合、初期償却額を除く未償却分の返還義務がある(老人福祉法に規定)
- サ高住の敷金は賃貸借契約のため、退去時に未使用分は原則返還される(老人福祉法の上記ルールとは別の仕組み)
入居一時金が高い施設は、それだけ良い施設だということでしょうか?
必ずしもそうではありません。入居一時金はあくまで月額との組み合わせで比較することが大切です。同じ施設でも入居一時金ゼロで月額高めのプランと、入居一時金500万円で月額低めのプランを設定しているケースがあります。予定入居年数で計算して、トータルコストが低い方を選ぶ視点が重要です。
月額費用の内訳 — 何に、いくら払っているか
月額の内訳がよく分からないんです。介護保険が適用されるのはどの部分で、自己負担はどこから来るんでしょう?
月額費用は大きく4つの項目から成っています。「介護保険サービス費の自己負担」「食費」「居住費(家賃)」「日常生活費」の合計が月額の基本です。介護保険が適用されるのはサービス費の部分ですが、食費・居住費は介護保険外の全額自己負担です。
| 費用項目 | 月額の目安 | 介護保険の適用 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 介護保険サービス費(自己負担) | 2万〜7万円程度 | 適用(1〜3割負担) | 要介護度・施設種別により異なる。所得により1割・2割・3割 |
| 食費 | 4万〜6万円程度 | 適用外(全額自己負担) | 低所得者は「負担限度額認定」で減額あり |
| 居住費(家賃・管理費) | 2万〜15万円程度 | 適用外(全額自己負担) | 多床室は安く、個室は高い。公的施設は「負担限度額認定」で減額あり |
| 日常生活費 | 1万〜3万円程度 | 適用外(全額自己負担) | 理美容・日用品・嗜好品など施設で購入するもの |
| 医療費 | 実費(別請求) | 医療保険の対象 | 月1〜5万円追加になることも。外来受診・入院は全額別途 |
| オムツ代 | 0〜2万円程度 | 施設によって対応が異なる | 月額に含む施設と別請求の施設がある |
※ 上記はあくまで目安です。施設の種類・グレード・要介護度・所得区分・居室タイプによって大きく変わります。介護保険自己負担は収入により1〜3割、同一月の上限を超えると「高額介護サービス費」の払い戻しがあります。
介護保険の自己負担が1割・2割・3割と3段階あるとのことですが、どうやって決まるんですか?
前年の所得と同一世帯の状況によって決まります。65歳以上で単身世帯の場合、合計所得220万円未満なら1割、220万円以上340万円未満なら2割、340万円以上なら3割が目安です(2024年現在)。夫婦世帯は合計所得の判定基準が異なります。介護保険証に自己負担割合が記載されているので確認できます。
隠れコスト — 月額表示に出てこない費用
施設のパンフレットに書いてある月額より、実際には多くかかるとよく聞くんですが……。
そうです、「隠れコスト」に要注意です。月額表示はあくまで基本的な費用の合計で、実際には月額請求書にさらに上乗せされる項目があります。入居前にしっかり確認しておかないと、後で「想定より毎月3万円多くかかっている」という事態になりかねません。
- 医療費: 外来受診・入院費は全額別途。持病があると月1〜5万円になることも。歯科治療・往診料も別
- オムツ・パッド代: 月額に含む施設と実費請求の施設がある。含まない場合は月1〜2万円の追加
- 個別ケアの追加料金: 夜間の個別対応・入浴回数増・外出付き添いなどが「加算」として別請求になる場合
- リネン・寝具の洗濯代: 施設によっては月額外。週1〜2回の洗濯で月数千円〜1万円程度
- 理美容代: 施設内の散髪・カット費用。月1〜2回で月3,000〜8,000円程度
- レクリエーション材料費・おやつ代: 施設主催の行事・クラブ活動の材料費が別途請求されることがある
- 交通費: 通院・外出時の交通費。施設の送迎の範囲外は実費
つまり、パンフレットの月額に毎月プラスで1〜5万円はかかると思っておいた方がいいんですね。
概ねそう考えておくのが安全です。特に持病があって通院が必要な方、認知症が進行して夜間対応が増える方は医療費・個別ケア費の増加が大きくなりやすいです。施設見学の際には「月額の内訳と別途請求になる項目の一覧」を書面でもらうことを強くおすすめします。
費用負担を軽くする公的制度
毎月20〜25万円は正直きつい。費用を抑えるための制度はあるんでしょうか?
はい、知っておくと大きく違う制度が4つあります。申請しないと使えない制度ばかりなので、入居前・入居後すぐに窓口(市区町村の介護保険課)に確認することが重要です。
| 制度名 | 対象者 | 内容・上限額 | 申請窓口 |
|---|---|---|---|
| 高額介護サービス費 | 要介護認定を受けた全員 | 同一月の介護保険自己負担が所得区分ごとの上限額を超えた分を払い戻し(例:一般世帯の上限は月44,400円) | 市区町村介護保険課(初回申請後は自動適用) |
| 高額医療・高額介護合算制度 | 医療費と介護費の合算が高い方 | 1年間(8月〜翌7月)の医療保険+介護保険の自己負担合計が限度額を超えた分を払い戻し | 市区町村介護保険課・医療保険者 |
| 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定) | 低所得者(市町村民税非課税世帯など) | 施設の食費・居住費について所得区分に応じた上限額(負担限度額)が設定され、超えた部分は介護保険から支払われる。第1段階では食費・居住費合計が大幅に安くなる | 市区町村介護保険課(事前申請が必要) |
| 生活保護 | 資産・収入が最低生活水準以下の方 | 介護扶助として施設費用を生活保護で全額まかなうことができる。まず資産処分が求められる場合がある | 福祉事務所(市区町村窓口) |
※ 高額介護サービス費の上限額は所得区分によって異なります(2024年時点:現役並み所得者は月140,100円、一般は44,400円、市民税非課税世帯は月24,600円が目安)。制度は年度ごとに改正される場合があるため、最新情報は市区町村窓口でご確認ください。
「特定入所者介護サービス費」というのは、具体的にどれだけ安くなるんですか?
特養に市民税非課税世帯(第2段階)の方が入居する場合、食費と居住費(多床室)の自己負担がそれぞれ月額で大幅に下がります。たとえば食費は月約5〜6万円が月約1〜2万円程度になるなど、月数万円の差になることがあります。第1段階(生活保護等)はさらに安くなります。この制度を知らずに申請しないまま入居している方も多いので、早めに確認してください。
申請はいつすればいいんですか? 入居前でもできますか?
負担限度額認定は入居前から申請できます。入居と同時に適用されるよう、入居が決まったら早めに市区町村の介護保険課に申請書を提出してください。高額介護サービス費は初回申請後に自動的に適用される市区町村が多いですが、最初の申請だけは手続きが必要です。
費用の試算手順と次の一歩
ここまで読んで費用の全体像はわかってきました。実際に試算するには何から始めればいいでしょうか?
5つのステップで試算を進めるとスムーズです。焦らず順番に整理していきましょう。
- ① 施設種別を絞る: 要介護度・認知症の有無・予算感から「公的か民間か」「医療ケアの必要性」を確認。[老人ホームの種類と違い](/guide/roujin-home-shurui-hikaku/)を参照
- ② 月額の目安を計算する: 施設種別の相場(本記事の表)を参考に、要介護度・居室タイプ・自己負担割合から月額を算出
- ③ 入居一時金を確認する: 0円プランと入居一時金ありのプランで予定入居年数×月額差額を比較し、有利な方を選ぶ
- ④ 隠れコストを加算する: 医療費・オムツ代・個別ケア費として月1〜3万円を目安に上乗せ(持病がある場合は5万円以上も)
- ⑤ 軽減制度を確認する: 市民税非課税世帯なら負担限度額認定の申請。所得を問わず高額介護サービス費も確認。[介護保険の自己負担割合](/guide/jiko-futan-wariai/)を参照
試算したら、次は実際に施設を見学すればいいんですよね?
関連するガイド
出典
- 厚生労働省「介護保険制度をめぐる状況について」(令和7年1月) (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「特定入所者介護サービス費(補足給付)について」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「高額介護サービス費の支給」 (参照: 2026-06-21)
- 公益財団法人生命保険文化センター「介護にかかる費用の実態」(2022年度調査) (参照: 2026-06-21)