介護のはじまりガイド
介護保険外サービスとは? — 保険でカバーできない部分を補う選択肢
「ヘルパーさんに家族の分の夕食も作ってほしい」「週末に趣味の外出に付き合ってほしい」——こうした希望を持つご家族は少なくありません。しかし介護保険のサービスには「本人の日常生活支援」という枠組みがあり、カバーできる範囲には限りがあります。そこで注目したいのが「介護保険外サービス」です。費用は全額自己負担になりますが、保険では頼めないことを民間事業者や自治体が補ってくれます。この記事では、保険外サービスの種類・料金目安・申し込み方法を整理してお伝えします。
公開: 2026-06-20
介護保険外サービスとは — 全額自己負担で使える自由なサービス
ヘルパーさんに来てもらっているのですが、「同居している私の食事は作れない」「大掃除はできない」と断られてしまいました。介護保険でカバーできないことは、どこかに頼めないんでしょうか?
介護保険の訪問介護は「ご本人の日常生活の支援」が目的で、家族の家事や大掃除は対象外です。こうしたニーズに応えるのが「介護保険外サービス」です。介護保険給付の対象ではないため、費用は全額自己負担(1〜3割ではなく10割負担)になりますが、民間事業者や自治体の制度を通じて幅広いサービスを利用できます。
全額自費なんですね。それでも使う意義はありますか?
はい。介護保険サービスだけでは補えない「生活の質」の部分を支えてくれます。たとえば家族全員分の食事準備、年に1〜2回の大掃除、冠婚葬祭への付き添いといったニーズは保険外サービスで対応できます。介護保険サービスと組み合わせて活用することで、在宅生活をより安心して続けられます。
- 費用負担: 全額自己負担(10割)。介護保険の1〜3割負担ではありません
- 利用できる人: 要介護・要支援認定の有無を問わず誰でも利用可(サービスによる)
- 提供主体: 民間事業者(家事代行・配食など)/ 自治体(緊急通報装置・紙おむつ給付など)
- ケアプランへの記載: 担当ケアマネジャーに保険外サービスの利用を報告すると、必要に応じて週間サービス計画表に記載してもらえます(平成30年9月28日厚労省通知)
なぜ介護保険外サービスが必要になるのか — 保険適用の「限界」
ヘルパーさんがあんなにたくさん来てくれているのに、まだ保険外サービスが必要になるんですか? 具体的にどんな場面で困るのか、もう少し教えてください。
介護保険の訪問介護には、いくつかの「できないこと」があります。代表的なケースをまとめますね。
- 家族の家事全般: 同居家族の食事・洗濯・部屋の掃除は保険対象外
- 大掃除・窓ふき・庭の草むしり: 「日常生活の範囲を超える行為」として保険適用外
- 趣味・娯楽の外出同行: 通院以外の外出(映画・買い物・友人宅訪問など)は通常対象外
- 冠婚葬祭・旅行への付き添い: 日常生活の範囲を超えるため対象外
- ペットの世話: 本人のペットであっても保険対象外
- 深夜・早朝の見守りだけ: 「話し相手目的のみ」の訪問は原則対象外
趣味の外出に付き添ってほしいというのはわがままではなくて、正当な需要なんですね。
まったくそのとおりです。介護が必要になっても「行きたい場所に行く」「好きなことを続ける」という生活の質は大切です。介護保険はあくまで日常生活の基本的なサポートを担い、それ以上の部分は保険外サービスで補う、という役割分担で考えると整理しやすいと思います。
主な介護保険外サービスの種類
保険外サービスには具体的にどんな種類があるんですか? 民間のサービスと自治体のサービス、両方あると聞いたのですが……。
はい、大きく民間が提供するサービスと自治体が補助・提供するサービスの2種類があります。まず民間サービスから見てみましょう。
| サービス種別 | 内容 | 料金目安(民間平均) |
|---|---|---|
| 家事代行・ホームヘルプ | 家族の食事準備、大掃除、窓ふき、庭の草むしり、ペットの世話など保険外の家事全般 | 1時間 3,000〜5,000円(事業者により差あり) |
| 配食サービス | 高齢者向け弁当を自宅に宅配。見守り訪問を兼ねる例も多い | 1食 500〜800円(献立・地域により差あり) |
| 見守りサービス | 人感センサー・緊急通報ボタン・カメラ設置・訪問見守りなど複数の方式あり | 月額 2,000〜5,000円(機器方式の場合) |
| 移送・付き添いサービス | 通院以外の外出(買い物・趣味・冠婚葬祭・旅行など)に付き添いや送迎を提供 | 1時間 2,000〜4,000円(距離・時間帯により変動) |
| 訪問理美容 | 自宅や施設に理容師・美容師が出張してカットや整容を行う | 1回 3,000〜6,000円(出張費込み) |
| 訪問医療マッサージ | 医師の同意書を取得した上でマッサージ師等が訪問(医療保険適用とは別系統) | 保険適用外の場合は1回 3,000〜5,000円程度 |
※ 料金はサービス事業者・地域・内容により大きく異なります。複数の事業者に問い合わせて比較してください。
種類が多いですね。配食サービスが見守りを兼ねるというのは初めて知りました。
配食サービスの事業者のなかには、弁当をお届けするついでに「ご本人と会話して様子を確認する」「応答がない場合に家族や緊急連絡先に知らせる」という見守り機能を組み込んでいるところがあります。食事と見守りを一度に解決できるため、一人暮らしの高齢者の方に特に人気のサービスです。
自治体の介護保険外サービス — 知らなかったでは損をする制度
自治体のサービスとはどんなものがあるんですか? 役所に聞けば教えてもらえるんでしょうか?
市区町村ごとに独自の福祉サービスを実施しており、介護保険に上乗せ・横出しする形で様々な支援を設けている自治体があります。自治体によって内容・対象条件・費用が大きく異なるため、「うちの市にはどんな制度があるか」を役所や地域包括支援センターに確認することが最初のステップです。
| 制度名 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 緊急通報装置の貸与・設置 | ボタンひとつで消防や相談センターに通報できる機器を自宅に設置・貸し出し | 所得条件や要介護度の要件がある自治体が多い。民間サービスより安価または無料の場合あり |
| 配食サービス補助 | 民間の配食サービス費用の一部を補助、または自治体独自の配食を低価格で提供 | 1食あたりの補助額は自治体により異なる。要介護度・年齢・所得条件が設定されている場合あり |
| 紙おむつ給付 | 要介護度が一定以上の方に紙おむつを現物給付または購入費を補助 | 要介護3〜5が対象の自治体が多いが、要件は各自治体で異なる |
| 住宅改修費上乗せ補助 | 介護保険の住宅改修費(上限20万円)に加え、自治体が独自に上乗せ補助を実施 | 補助額・対象工事・所得要件は自治体により大きく異なる |
| 訪問理美容補助券 | 自宅や施設に出張する理美容師の費用を補助する券を交付 | 利用回数・補助額ともに自治体差が大きい |
| 生活支援員の派遣 | 社会福祉協議会やシルバー人材センターを通じ、買い物・話し相手などを低価格で提供 | 自治体・社協によって実施の有無が異なる |
※ 上記はあくまで「こういった制度を設けている自治体がある」という例です。実際の制度内容・対象条件・費用は市区町村ごとに異なります。必ず担当窓口でご確認ください。
介護保険の住宅改修に上乗せできる自治体があるとは知りませんでした。これは積極的に調べた方がよさそうですね。
ぜひ調べてみてください。同じ改修工事でも、自治体補助の有無で実質負担額が数万円変わることがあります。ただし申請の時期(工事前・後など)や書類の準備も必要なので、工事を計画する前に必ず役所か地域包括支援センターに確認するのがポイントです。
民間と自治体の使い分け・料金の考え方
民間と自治体のサービスがあるとわかりましたが、実際にはどう使い分ければいいのでしょうか? 費用も気になっています。
シンプルに整理すると、自治体の制度があれば優先的に活用し、対象外・対象外になる部分を民間で補うのが基本です。以下の表で比較してみましょう。
| 比較軸 | 民間サービス | 自治体サービス |
|---|---|---|
| 費用 | 全額自己負担(市場価格)。サービス内容に応じて1時間数千円〜 | 補助・減額制度あり。所得・要件次第で無料〜低価格 |
| 利用条件 | 基本的に誰でも利用可(認定不要の場合が多い) | 要介護度・年齢・所得など条件あり。自治体によって異なる |
| 対応できる幅 | 幅広い(家事代行・配食・移送・見守りなど多様) | 自治体が設けた制度に限られる |
| 手続き | 事業者に直接申し込みが基本 | 役所・地域包括支援センターで申請が必要 |
| 対応スピード | 比較的早い(事業者次第) | 申請から利用開始まで数週間かかる場合あり |
| 確認先 | 介護保険外サービスを提供する民間事業者に問い合わせ | 市区町村役所(介護保険担当・福祉担当)または地域包括支援センター |
※ 自治体サービスは制度の存在・内容が非常にばらつきがあります。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに「うちの市区町村ではどんな制度がありますか?」と一度相談してみることをおすすめします。
費用がどのくらいかかるか、もう少し具体的なイメージが欲しいです。
たとえば家事代行を週1回2時間(1時間4,000円×2=8,000円)利用し、配食サービスを週5日(1食600円×20食=12,000円)使った場合、月額約2万円が保険外の自費になります。介護保険サービスの自己負担(1割・2割)に加えてかかる費用ですので、ケアマネジャーと一緒に「何を保険で、何を保険外で」と整理しながらプランを組むことが大切です。
申し込みと利用の注意点
実際に使い始めるには、どこから手をつければいいですか? ケアマネジャーさんに相談しておく必要はありますか?
民間サービスは事業者に直接申し込みができますが、担当のケアマネジャーに事前に相談・報告しておくことを強くおすすめします。厚生労働省の通知(平成30年9月28日)では、保険外サービスを利用する際はケアマネジャーへの報告が求められています。ケアマネジャーが状況を把握していることで、保険内外のサービスを重複なくうまく組み合わせることができます。
契約の際に気をつけることはありますか?
いくつかポイントがあります。介護保険サービスとは別の契約書・料金体系になっていることを確認してください。「保険内サービスと一緒に請求されていて内訳がわからない」というトラブルが起きやすいポイントです。また、キャンセルポリシー・解約条件もしっかり確認しましょう。
- ケアマネジャーへの相談・報告: 保険内外の全サービスをケアマネジャーに把握してもらうとスムーズです
- 契約書・重要事項説明書の確認: 保険外サービスは介護保険とは別の契約。内容・料金・解約条件を確認
- 料金の明細を確認: 介護保険サービスの請求と保険外サービスの請求が明確に区分されているか確認
- 自治体制度の確認: 役所・地域包括支援センターに「どんな補助制度があるか」を事前に問い合わせる
- 悪質業者に注意: 訪問販売でしつこく勧誘してくる業者には注意。「クーリングオフ(8日間)」が適用されます
わかりました。まずはケアマネジャーさんに相談して、自治体の制度を確認してから民間サービスを探してみます。
その順番がベストです。地域包括支援センターも、地域のサービス情報に詳しいので積極的に活用してください。まちの介護施設では地域ごとの自治体サービスもご案内できますので、お気軽にご相談ください。
- 担当ケアマネジャー: 保険内外のサービスを組み合わせたプラン相談の窓口
- 地域包括支援センター: 自治体独自の制度・地域の民間サービス情報を提供
- 市区町村の介護保険担当窓口: 自治体補助制度(紙おむつ給付・緊急通報装置など)の申請窓口
- まちの介護施設(当サイト): 地域別のサービス情報や相談先をご紹介しています
関連するガイド
出典
- 厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日通知) (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」 (参照: 2026-06-21)