介護のはじまりガイド
介護でもらえる給付金・補助一覧 — 介護休業給付・市区町村助成まで
「介護でもらえる給付金があると聞いたけど、何がどこにあるのかわからない」——そう感じている方は多いはずです。介護に関わる給付金・補助制度は、①介護保険の軽減制度、②雇用保険の介護休業給付金、③確定申告で活用できる税制優遇、④市区町村独自の助成と、じつに4つのカテゴリにまたがっています。どれも「申請しないともらえない申請主義」の制度です。この記事では、見落としがちな給付金を含めて一覧で整理し、申請の窓口まで解説します。複数の制度を組み合わせて活用できるケースもあるので、ひとつずつ確認してみてください。
公開: 2026-06-21
介護で使える給付金・補助の全体像
母の介護が始まって半年になります。費用がどんどんかさんでいるんですが、何か補助が受けられると聞いたことがあって。どこから手をつければいいでしょうか?
介護に使える給付金・補助制度は、大きく4つのカテゴリに分かれています。①介護保険に関連した軽減・給付、②雇用保険の介護休業給付金、③確定申告で使える税制優遇、④市区町村が独自に用意している助成制度です。それぞれ申請窓口も申請タイミングも違いますので、まず全体像を把握しておくことが大切です。
- ① 介護保険関連: 高額介護サービス費・高額医療合算・負担限度額認定・住宅改修費・福祉用具購入費(申請先:市区町村介護保険課)
- ② 雇用保険関連: 介護休業給付金・介護休暇(申請先:会社経由→ハローワーク)
- ③ 税制優遇: 医療費控除・障害者控除(申請先:税務署または年末調整)
- ④ 市区町村独自助成: 紙おむつ支給・介護慰労金・福祉用品支給・タクシー助成など(申請先:市区町村)
こんなにいろいろあるんですね。全部同時に使えるんでしょうか?
制度によって、二重に受け取れるものとそうでないものがあります。たとえば高額介護サービス費の払い戻しを受けながら、医療費控除も申告できます。反対に、同じ費用を複数の給付から重複して受け取ることはできません。また、どの制度も「自分から申請しないともらえない申請主義」です。知らないまま過ごしてしまうと、受け取れたはずの給付を逃すことになります。
介護保険関連の給付・軽減制度
介護保険のサービスを使っていますが、費用の負担が月に10万円を超えることもあって。介護保険から何か戻ってくる制度はありますか?
高額介護サービス費という制度があります。1か月に支払った介護サービスの自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合、超えた分が払い戻されます。申請すれば翌月以降は自動的に計算されますが、最初の1回目だけ市区町村の介護保険課に申請が必要です。
| 制度名 | 主な内容 | 申請先 |
|---|---|---|
| 高額介護サービス費 | 1か月の介護サービス自己負担が所得ごとの上限を超えた分を払い戻し(上限額は所得区分で異なる) | 市区町村介護保険課(初回申請のみ) |
| 高額医療・高額介護合算療養費 | 1年間(8月〜翌7月)の医療保険と介護保険の自己負担合計が一定額を超えた分を払い戻し | 加入している医療保険と市区町村の双方に申請 |
| 負担限度額認定(特定入所者介護サービス費) | 低所得者が施設サービスや短期入所を利用する際、食費・部屋代の自己負担を軽減する認定。認定証を事業所に提示 | 市区町村介護保険課(年1回更新) |
| 居宅介護住宅改修費 | 手すり取り付け・段差解消など6種類のバリアフリー改修に、1人20万円を上限に費用の7〜9割を支給 | 市区町村介護保険課(工事前の事前申請が必要) |
| 特定福祉用具販売費(特定福祉用具購入費) | シャワーチェア・簡易浴槽など衛生的な理由でレンタルできない用具の購入費を年10万円を上限に7〜9割支給 | 市区町村介護保険課(購入後に申請) |
※ 自己負担割合は所得に応じ1〜3割。高額介護サービス費の上限額は所得区分によって異なります(2025年8月以降の見直し情報は市区町村窓口または厚生労働省ウェブサイトをご確認ください)。
「高額介護サービス費」と「高額医療・高額介護合算療養費」の違いがよくわからないんですが?
計算の期間と対象が違います。高額介護サービス費は介護保険の自己負担だけを1か月単位で見ます。高額医療・高額介護合算は医療保険と介護保険の自己負担を合算して1年単位で見ます。重度の方や長期入院・介護が重なる方は、合算制度のほうが恩恵を受けやすいです。両方同時に使えます。
- 居宅介護住宅改修費は、工事完了後に申請するのではなく工事前に市区町村へ事前申請が必要です。
- 事前申請なしで工事を始めてしまうと、介護保険が適用されない場合があります。ケアマネジャーに相談してから工事業者に発注しましょう。
働きながら介護する人への給付 — 介護休業給付金
私は会社員で、今は在宅勤務と介護を掛け持ちしています。介護のために仕事を休んだ場合、給付金が出ると聞いたんですが?
介護休業給付金です。雇用保険の被保険者が、介護のために仕事を休んだ場合に、賃金の原則67%相当が支給されます。取得できる日数は同一の対象家族について通算93日が上限で、最大3回まで分割して取得できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額の目安 | 休業開始時の賃金日額 × 67% × 休業日数(上限あり) |
| 対象者 | 雇用保険の被保険者(正社員・有期契約社員など。一定の条件を満たす必要あり) |
| 取得可能日数 | 対象家族1人につき通算93日以内(最大3回に分割して取得可) |
| 対象家族の範囲 | 配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫 |
| 申請窓口 | 勤務先の会社経由でハローワークに申請(休業終了後に申請) |
※ 2025年改正により、介護休業・介護休暇の柔軟な取得要件が拡充されました。詳細は勤務先の人事部門またはハローワークにお問い合わせください。出典:厚生労働省「介護休業給付金(雇用保険の給付)」
93日というと、約3か月ですね。たとえば月給30万円の場合、どのくらいもらえますか?
目安でいうと、月給30万円の方が1か月(31日)休業した場合、約19〜20万円が支給されます(30万円×67%÷31日×31日で計算しますが、上限単価があるため実際の金額は変わる場合があります)。申請は休業終了後に会社を通じて行います。自分で直接ハローワークに行くのではなく、まず会社の人事部門に「介護休業を取りたい」と相談するところから始めましょう。
「介護休暇」という言葉も聞きます。介護休業とはどう違うんですか?
介護休暇は年5〜10日の短期休暇です(対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日)。通院の付き添いや役所での手続きなど、1日または半日単位で取得できます。介護休業とは別に取得できますが、介護休暇は原則として無給です(会社によって有給の場合あり)。介護休業給付金は介護休業(長期の休み)にしか適用されません。
- 介護離職をすると介護休業給付金は受け取れません。
- 介護休業・介護休暇の制度を使いながら仕事を続けることで、給付金を受け取りつつキャリアも守れます。
- 「仕事と介護の両立」に行き詰まりを感じたら、会社の人事部門または最寄りのハローワークに相談してください。
税制優遇 — 医療費控除と障害者控除
確定申告で介護の費用が取り返せると聞いたんですが、どういう仕組みですか?
大きく2つあります。① 医療費控除と② 障害者控除です。医療費控除は、介護サービスの利用料の一部を「医療費」として申告することで所得税・住民税が減る制度です。障害者控除は、要介護認定を受けた方を扶養している場合に使える所得控除です。
| 費用の種類 | 対象の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 訪問看護の利用料 | 医療系訪問看護は全額対象 | 介護保険の訪問看護(医療)は対象。生活援助のみの訪問介護は対象外 |
| 通所リハビリ(デイケア)の利用料 | 医療系通所リハビリは対象 | デイサービス(介護系)は原則対象外 |
| 訪問リハビリテーション | 対象 | 医師の指示書に基づくもの |
| おむつ代 | 要介護4または5で医師が必要と認めた場合、医師の「おむつ使用証明書」があれば対象 | 証明書の発行は医師に依頼 |
| 施設入居費(特養・老健など) | 医療費的性質が高い施設は自己負担の一部が対象 | 食費・部屋代は原則対象外 |
| 特定施設(有料老人ホームなど)の費用 | 介護保険上の特定施設入居者生活介護等の自己負担分の一部が対象になる場合あり | 施設区分(介護付き有料・住宅型・地域密着型 等)で扱いが異なります。国税庁または税務署で最新の取り扱いをご確認ください |
※ 医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円(総所得が200万円未満の場合は総所得の5%)を超えた分が対象です。申告は確定申告(会社員の場合は確定申告書を税務署に提出)で行います。出典:国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」
「障害者控除」というのは、要介護認定を受けると使えるんですか? 障害者手帳がなくても?
はい。要介護認定を受けた65歳以上の方は、市区町村から「障害者控除対象者認定書」を発行してもらうことで、障害者手帳がなくても障害者控除が使えます。所得控除の額は障害者で27万円、特別障害者で40万円です。同居している特別障害者の場合は同居特別障害者控除として75万円になります。申請先は市区町村の介護保険課です。特別障害者に該当するかの認定基準は自治体ごとに異なります(要介護4・5相当が一般的な目安ですが、要件は必ず居住地の市区町村にご確認ください)。
本人(要介護の親)が確定申告するんですか? それとも、介護している私が申告するんでしょうか?
状況によって異なります。本人が確定申告をする場合は本人が申告します。あなたが親を扶養している場合(生計を一にしている)は、あなたの確定申告で扶養控除と障害者控除を合わせて申告できます。医療費控除も、生計を一にする家族が支払った医療費は合算できます。まず税務署か国税局の電話相談センターに確認することをおすすめします。
- 要介護認定を受けていても、市区町村に「障害者控除対象者認定書」の発行申請をしなければ障害者控除は使えません。
- 申請先は住んでいる市区町村の介護保険課(または福祉課)です。12月ごろに申請すれば、確定申告シーズン(2〜3月)に間に合います。
- 認定書の発行は無料で、原則として要介護認定結果を基に判定されます。
市区町村独自の助成 — 住む場所で大きく変わる
市区町村独自の助成というのは、どんなものがあるんでしょう? 自分の住んでいる自治体にも何かあるのか確認したいです。
市区町村独自の助成は、制度の有無も金額も自治体によって大きく異なります。代表的なものをいくつか紹介しますが、詳細は必ずお住まいの市区町村の窓口(介護保険課・障害福祉課・高齢者福祉課など)で確認してください。
| 助成の種類 | 内容の目安 | 窓口 |
|---|---|---|
| 紙おむつ支給・おむつ代助成 | 在宅の要介護者(要介護3〜5が多い)に月1〜2回、一定量の紙おむつを支給または購入費を助成。金額・要件は自治体による | 市区町村介護保険課・高齢者福祉課 |
| 家族介護慰労金(介護慰労金) | 在宅で要介護4・5の方を介護している家族に年5万〜10万円程度を支給する自治体がある。介護保険のサービスを一定期間使わないことが条件の場合も | 市区町村介護保険課 |
| 家族介護用品支給(紙おむつ以外) | 介護手袋・ドライシャンプー・スキンケア用品などを年間1万〜3万円分支給する自治体がある | 市区町村高齢者福祉課 |
| 介護タクシー助成・移送サービス | 通院時のタクシー券配布や移送サービスの助成。要介護度・収入によって条件が異なる | 市区町村介護保険課・障害福祉課 |
| 配食サービスの補助 | 一人暮らしや高齢世帯向けに食事の宅配費用を補助。安否確認も兼ねている場合がある | 市区町村高齢者福祉課 |
※ 各助成の有無・金額・要件は自治体によって大きく異なります。制度のない自治体もあります。まずはお住まいの市区町村の窓口または地域包括支援センターにお問い合わせください。
家族介護慰労金というのは、知りませんでした。どんな条件で受け取れるんですか?
自治体によって異なりますが、多くは在宅で要介護4または5の家族を介護している方が対象です。条件として「介護保険サービスを過去1年間でほぼ利用していない(利用日数が少ない)こと」を求める自治体もあります。金額は年5万〜10万円程度が一般的です。この制度は申請しなければ給付されないため、まず市区町村の介護保険課に問い合わせてみてください。
市区町村の助成は、どこで一覧を調べられますか?
市区町村のウェブサイトか、地域包括支援センターへの問い合わせが最確実です。地域包括支援センターは市区町村ごとに設置されている相談窓口で、介護保険の手続き支援から地域の独自サービスの案内まで無料でサポートしてくれます。「介護で使える助成制度を教えてほしい」と一言伝えれば、担当者が整理して教えてくれます。
成年後見制度の費用助成と相談先
父が認知症で、財産の管理が難しくなってきました。成年後見制度を使ったほうがいいと言われたんですが、費用はどのくらいかかりますか?
成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産や生活を法的に守る制度です。法定後見(家庭裁判所が審判する)と任意後見(本人が判断能力のあるうちに後見人を指定する)の2種類があります。法定後見には後見・保佐・補助の3類型があり、判断能力の程度によって使い分けます。
| 費用の種類 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 800円 | 家庭裁判所への申立時に必要(後見・保佐・補助の各類型) |
| 登記嘱託手数料(収入印紙) | 2,600円 | 審判確定後の登記に必要 |
| 郵便切手・診断書代等 | 数千円程度 | 切手代・医師の診断書作成料など、合計で公的費用は1万円前後が目安 |
| 鑑定費用 | 5万〜20万円程度 | 裁判所が必要と判断した場合に発生。発生しないケースも多い。事案の難易度により変動 |
| 後見人への報酬(専門職後見人の場合) | 月2万〜6万円程度(本人の財産規模による) | 家庭裁判所が金額を決定。親族が後見人の場合は報酬なしもある |
| 任意後見契約の公正証書作成費用 | 1万〜1.5万円程度 | 公証役場で作成 |
※ 費用は事案によって異なります。裁判所ウェブサイトおよび各公証役場でご確認ください。出典:裁判所「成年後見制度についてQ&A」
費用の助成はありますか? 年金だけの親の場合、毎月後見人への報酬を払うのは難しいかもしれないんですが。
低所得の方向けに、市区町村が後見人への報酬や申立費用を助成する制度があります。「成年後見制度利用支援事業」と呼ばれ、多くの市区町村で実施されています。対象は生活保護受給者や住民税非課税世帯が中心ですが、要件は自治体によって異なります。助成を受けたい場合は、市区町村の高齢者福祉課や障害福祉課に申し出てください。
「家族信託」という言葉も最近聞くんですが、成年後見とは何が違うんですか?
大きな違いは、家族信託は本人が判断能力のあるうちに契約する民間の制度である点です。親が子に財産の管理・処分を信託(委託)することで、認知症になった後も子が柔軟に財産を使えるようにできます。一方、成年後見は判断能力が低下した後に裁判所が関与する法的制度です。どちらが適しているかは状況や財産の内容によって異なるため、弁護士・司法書士・社会福祉協議会などに相談することをおすすめします。
- 地域包括支援センター: 制度の概要説明・申立の案内(無料)
- 社会福祉協議会: 市民後見人の育成・後見に関する相談(無料)
- 弁護士会・司法書士会: 申立書類の作成支援・専門的法律相談(費用が発生する場合あり)
- 家庭裁判所(各地方裁判所): 申立の方法・書類の確認(直接窓口で相談可能)
- 法テラス(日本司法支援センター): 収入が少ない方向けの無料法律相談・弁護士費用の立替制度あり
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給付金や補助制度がこんなにあるとは知りませんでした。自分の状況に合わせて、どれを優先して申請すればいいか整理したいです。
まず確認してほしいのは①高額介護サービス費(毎月の介護費用が多い方は最優先)と②市区町村独自の助成(地域包括支援センターに問い合わせるだけで確認できます)です。働いている方は③介護休業給付金も忘れずに。税制優遇(④医療費控除・障害者控除)は確定申告のタイミングで申告できます。
介護費用の全体像や、高額介護サービス費の詳しい計算方法をもっと知りたいです。
関連する記事もぜひ参考にしてください。費用の平均や月々の負担感をイメージする「介護費用の平均」、費用を抑えるための方法をまとめた「高額介護サービス費のしくみ」、また介護離職を防ぐための情報は「介護離職を防ぐために」の記事で詳しく解説しています。
- □ 高額介護サービス費: 1か月の自己負担が上限額を超えていないか確認(市区町村介護保険課へ)
- □ 負担限度額認定: 施設入居・ショートステイを使う低所得の方は認定証を取得(市区町村介護保険課へ)
- □ 住宅改修費・福祉用具購入費: バリアフリー工事や用具購入の前にケアマネに相談(事前申請が必要)
- □ 介護休業給付金: 介護休業を取る場合は会社の人事部門に申し出る
- □ 障害者控除対象者認定書: 年末までに市区町村へ申請して確定申告に備える
- □ 市区町村独自助成: 地域包括支援センターまたは市区町村窓口に問い合わせる
- □ 成年後見の費用助成: 低所得の場合は市区町村の「成年後見制度利用支援事業」を確認
関連するガイド
出典
- 厚生労働省「高額介護サービス費の支給について」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「介護休業給付金(雇用保険給付)の概要」 (参照: 2026-06-21)
- 国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」 (参照: 2026-06-21)
- 国税庁「障害者控除」(No.1160) (参照: 2026-06-21)
- 裁判所「成年後見制度について(Q&A)」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「介護保険制度をめぐる状況について(令和7年1月)」 (参照: 2026-06-21)