介護のはじまりガイド
介護費用は平均いくらかかる? — 月額・総額・内訳の実態
「親の介護が始まったら、いったいいくらかかるんだろう」——そんな不安を抱える方は多いはずです。老後の資金計画をどう立てればいいかわからないまま、なんとなく先送りにしてしまう方も少なくありません。 この記事では、生命保険文化センターの2024年度調査をもとに、在宅介護と施設介護の月額費用の平均をわかりやすく整理します。5年・10年での総額シミュレーションも示しながら、費用を誰がどう負担するかの考え方、そして介護保険の軽減制度の組み合わせ方まで解説します。数字の全体像をつかんでおくだけで、いざというときの備えが大きく変わります。
公開: 2026-06-21
介護費用の全体像 — 月額と総額で考える
親の介護が必要になりそうで、お金のことが心配です。介護って、月にどのくらいかかるものなんでしょうか?
まず大枠をつかむには、「月額」と「総額」の2つの軸で考えるのがおすすめです。生命保険文化センターの最新調査(2024年度)によると、在宅介護の月額費用の平均は約5.3万円、施設介護は約13.8万円です。同調査で介護期間の平均が4年7ヶ月(55ヶ月)とされていますので、単純計算で在宅なら約318万円、施設なら約759万円が一つの目安になります。
施設に入ると月14万円近くもかかるんですね。在宅の5.3万円との差が大きいですが、在宅の方が安いというわけでもないのかな、という気もして。
鋭い着目です。在宅の場合は月々の介護サービス費以外にも、住宅改修費や福祉用具購入費などの初期一時費用がかかります。同調査では、住宅改修・介護用ベッドなどの一時費用の平均は約47.2万円です。在宅は月額が低くても、こういった費用が加わることを念頭に置いておく必要があります。
- 在宅介護の月額費用(平均): 約5.3万円
- 施設介護の月額費用(平均): 約13.8万円
- 介護期間の平均: 4年7ヶ月(55ヶ月)
- 一時費用(住宅改修・福祉用具購入等)の平均: 約47.2万円
- 総額の目安(在宅5年): 約318万円 + 一時費用
- 総額の目安(施設5年): 約828万円
親が施設に入ることになったら、資金が相当必要になるんですね。どこから準備すればいいのか、頭が痛くなってきました。
費用の全体像を知ると焦りますよね。ただ、親自身の年金と預貯金で賄える部分が多くあります。また、高額介護サービス費など軽減制度を活用することで実質的な負担を大幅に抑えられる仕組みもあります。まずは「月々どのくらいかかるか」の内訳を順番に見ていきましょう。
在宅介護の月額費用
在宅介護の月5.3万円という平均には、何が含まれているんですか?
在宅介護の月額費用は大きく4つの要素で構成されています。①介護保険サービスの自己負担(ヘルパー・デイサービスなど)、②食費・光熱費の増分、③おむつなどの消耗品費、④通院・交通費です。中でも介護保険サービスの自己負担は要介護度によって大きく変わるのがポイントです。
| 要介護度 | 区分支給限度基準額(月) | 自己負担の目安(1割の場合) | 利用例 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 約5,000円 | 週1〜2回の訪問介護や通所サービス |
| 要支援2 | 105,310円 | 約10,500円 | 週2〜3回の通所サービス+福祉用具 |
| 要介護1 | 167,650円 | 約16,800円 | 訪問介護+週2〜3回デイサービス |
| 要介護2 | 197,050円 | 約19,700円 | 訪問介護(週3回)+デイサービス(週3回) |
| 要介護3 | 270,480円 | 約27,000円 | 訪問介護+通所リハビリ+ショートステイ |
| 要介護4 | 309,380円 | 約30,900円 | 訪問介護(週5回)+デイサービス+訪問看護 |
| 要介護5 | 362,170円 | 約36,200円 | ほぼ上限まで複数サービスを組み合わせ |
※ 区分支給限度基準額は2024年4月時点。自己負担は所得に応じて1〜3割。実際の費用はケアプランや利用サービスによって異なります。出典:厚生労働省「介護保険制度の解説」
介護保険サービスの自己負担以外に、食費や消耗品なども積み上がっていくんですね。
そうです。在宅で過ごす時間が増えると食費・光熱費は月1〜2万円程度増えることが多いです。おむつ代は要介護3以上だと月5,000〜1万円程度かかることもあります。通院の付き添いや交通費も積み重なります。介護保険の自己負担が低い要支援〜要介護2の方でも、こういった保険外の費用を含めると月3〜5万円以上になるケースは珍しくありません。月5.3万円という平均値にはこれらの費用が含まれています。
- 介護保険サービス自己負担: 要介護度によって月5,000〜36,000円程度
- 食費・光熱費の増分: 月1〜2万円程度(在宅時間増で上昇)
- 消耗品(おむつ・ウェットシート等): 月3,000〜1万円程度
- 通院・交通費: 月3,000〜5,000円程度
- 市販の介護用品・補助食品: 月3,000〜1万円程度
施設介護の月額費用
施設に入居するとなると、月額13.8万円という平均より高くなることもあるんでしょうか?
施設の種類によって月額費用は大きく異なります。特別養護老人ホーム(特養)は費用が比較的低めですが、入居待ちが長い。介護付き有料老人ホームは高めですが入居しやすい。それぞれの相場感を確認しておきましょう。
| 施設の種類 | 月額費用の目安 | 入居一時金の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 8〜15万円 | なし | 公的施設。要介護3以上が入居条件。待機期間が長いことが多い |
| 介護老人保健施設(老健) | 8〜20万円 | なし | 公的施設。在宅復帰を目的としたリハビリ中心。原則3〜6ヶ月の短期利用 |
| グループホーム(認知症対応) | 15〜25万円 | 数十万〜百万円程度 | 認知症の診断がある方対象。少人数(9人以下)で共同生活 |
| 介護付き有料老人ホーム | 18〜35万円 | 0〜数千万円 | 24時間介護スタッフ常駐。入居しやすいが費用は高め |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 10〜25万円 | 敷金程度 | 賃貸住宅の形態。安否確認と生活相談が基本、介護は外部サービスを利用 |
※ 費用は2024年時点の一般的な目安です。居室タイプ(個室・多床室)・地域・施設ごとに大きく異なります。多床室の特養は費用を抑えられますが、個室型は高くなります。
特養は費用が低いんですね。でも待機期間が長いと、すぐには入れないということですよね。
そうです。特養の待機期間は施設・地域によって異なりますが、数ヶ月から数年かかるケースもあります。「いつ入れるかわからない」という状況での生活設計が難しいのが特養の実情です。緊急度が高い場合や、すぐに入居先が必要な場合は、有料老人ホームやサ高住を先に検討しつつ、特養の待機リストに申し込んでおく、という方法も取られます。
月額の他に、入居一時金という費用もかかることがあるんですね。これはどういうものですか?
入居一時金とは、有料老人ホームなどで入居する際にまとまった金額を前払いするお金で、一般的には家賃相当額の前払い分と考えると分かりやすいです。施設によって0円から数千万円まで幅があります。入居一時金が高い施設は月額が低く設定されていることが多く、逆に一時金ゼロの施設は月額が高い傾向があります。総額で比較することが大切です。
5年・10年での総額シミュレーション
月額の平均はわかったのですが、実際に5年や10年かかったとすると、総額はどのくらいになるんでしょう?
長期視点で見ると、介護費用の全体像がより鮮明になります。生命保険文化センター2024年度調査の月額平均を使って試算すると、在宅と施設では長くなるほど総額の差が広がっていきます。
| 介護の形態 | 5年間の総額目安 | 10年間の総額目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 在宅介護(月5.3万円ベース) | 約318万円+一時費用約47万円 = 約365万円 | 約636万円+一時費用 | 要介護度や利用サービスにより幅あり |
| 特別養護老人ホーム(月10万円ベース) | 約600万円 | 約1,200万円 | 入居一時金なしの場合。多床室想定 |
| 介護付き有料老人ホーム(月25万円ベース) | 約1,500万円+一時金 | 約3,000万円+一時金 | 入居一時金は別途。施設により大差あり |
※ あくまで目安の試算です。要介護度・施設の種類・居室タイプ・地域・利用するサービスにより実際の費用は大きく異なります。高額介護サービス費などの軽減制度を活用すると自己負担は減ります。在宅の月額は生命保険文化センター2024年度調査(5.3万円)をもとにした試算。
施設に10年いると1,000万円以上になることもあるんですね。これは親の年金や貯蓄だけで賄えるものなんでしょうか?
施設費用が高い場合、年金収入だけでは不足するケースも少なくありません。ただし、特養の場合は低所得者向けに「負担限度額認定」という軽減制度があり、食費・居住費を大幅に抑えられます。また、有料老人ホームでも高額介護サービス費の対象となる費用があります。軽減制度を前提とした費用計算をすることが、現実的な資金計画につながります。
施設の選択によってこれだけ差が出るんですね。どの施設を選ぶかは、資金計画上もすごく重要な決断なんですね。
そのとおりです。在宅か施設か、特養か有料かで10年間で数百万〜2,000万円以上の差が生まれることもあります。「今の状態に合った選択」と「資金的に長く続けられる選択」を両立できるよう、早めに選択肢を知っておくことが大切です。
介護費用は誰が払う? — 親のお金が原則
介護費用は子どもが出すものだと思っていたんですが、実際はどうなんでしょう?
介護費用の基本的な考え方は、まず親自身の資産(年金・預貯金・不動産)で賄うというものです。親が元気なうちから「自分の介護費用は自分の資産から出す」という認識を家族で共有しておくことが、のちのちの摩擦を防ぎます。
- ① 親の年金収入: 厚生年金の平均受給額は月約15万円(国民年金は月約5.6万円、厚労省 令和6年度)。在宅介護費用の大半を賄える水準
- ② 親の預貯金: 総務省家計調査では、70歳以上世帯の平均貯蓄額は約2,500万円(2023年、二人以上世帯)
- ③ 親の不動産: 持ち家を売却・リースバックする選択肢もある
- ④ 子どもによる費用負担: 親の資産が不足する場合に兄弟間で協議して分担
親の厚生年金が月15万円あれば、在宅介護ならほぼ賄える計算になるんですね。施設の場合はどうですか?
施設(特に有料老人ホーム)は月20〜30万円以上かかることも多く、年金だけでは不足するケースが出てきます。その場合は預貯金を取り崩しながら対応するのが一般的です。70歳以上世帯の平均貯蓄は約2,500万円とされており、この水準があれば10年分の施設費用(特養水準)はある程度賄える計算になりますが、有料老人ホームを長期利用する場合は不足するケースもあります。
子どもが費用を出すことになった場合、兄弟がいると誰が払うかでもめそうで心配です。
兄弟間でのお金のトラブルは少なくありません。早めに話し合いの場を設けて、「親のお金の管理を誰がするか」「不足が出たときにどう分担するか」の大枠を決めておくことが大切です。親名義の口座からの引き落としを設定したり、毎月の費用を記録して透明化したりすることで、後々の誤解を防げます。親が元気なうちに任意後見の仕組みを整えておく方法もあります。
費用を抑える制度を組み合わせる
介護費用を少しでも抑えるための制度があると聞きましたが、どんなものがあるんですか?
介護費用の自己負担を軽減する制度はいくつかあります。申請しなければ受けられない給付がほとんどですので、制度の存在を知っておくことが費用軽減の第一歩です。
| 制度名 | 内容 | 申請窓口 |
|---|---|---|
| 高額介護サービス費 | 1ヶ月の介護保険自己負担が一定額を超えた場合に超過分を払い戻す制度。上限額は所得区分により15,000〜44,400円 | 市区町村介護保険課 |
| 負担限度額認定(特定入所者介護サービス費) | 施設入所・ショートステイ利用時の食費・居住費を低所得者向けに軽減する制度。市民税非課税の方が対象 | 市区町村介護保険課 |
| 高額医療・高額介護合算療養費制度 | 医療費と介護費の自己負担の合計額が年間の上限額を超えた場合に超過分を払い戻す。両方の自己負担が高い方に有効 | 市区町村介護保険課・健康保険組合 |
| 医療費控除(確定申告) | 介護保険サービスの自己負担の一部や特養等の食費・居住費が医療費控除の対象になる場合がある。毎年の確定申告で申請 | 税務署(確定申告) |
| 障害者控除(確定申告) | 要介護認定を受けた65歳以上の方は、市区町村の認定を受けることで所得税・住民税の障害者控除(27万〜75万円)が受けられる場合がある | 市区町村(認定書発行)→税務署 |
| 市区町村独自の助成制度 | おむつ代助成・配食サービス補助・移送サービス支援など市区町村によって独自の補助がある | 市区町村介護保険課・地域包括支援センター |
※ 各制度の対象条件や限度額は年度により変更される場合があります。最新情報は市区町村介護保険課または地域包括支援センターでご確認ください。
こんなに軽減制度があるんですね。どれが使えるか、どこに聞けばいいんでしょう?
市区町村の介護保険課か、地域包括支援センターが一番の相談窓口です。どの制度が適用されるかは所得・世帯構成・利用サービスによって変わるため、担当者に状況を話して「使える制度を全部教えてほしい」と確認するのが確実です。ケアマネジャーも費用軽減の情報に詳しいので、担当のケアマネにも相談してみてください。
申請しないと受けられない制度が多いんですね。気をつけなければいけませんね。
そうです。特に高額介護サービス費は自動的に払い戻されることもありますが、初回は申請が必要な市区町村が多い。負担限度額認定も毎年更新が必要です。制度の存在を知っているかどうかで、年間数万〜数十万円の差が生まれることもあります。「自分が損をしていないか」という視点で、定期的に窓口に確認することをおすすめします。
次の一歩
介護費用の全体像がつかめてきました。もう少し詳しく知りたいことがいくつかあるんですが、どの記事を読むといいですか?
費用面をさらに深掘りしたい方には、以下の記事が参考になります。目的に合わせて読み進めてみてください。
- 高額介護サービス費を詳しく知る: 月額の上限額・申請方法・払い戻しの流れを解説 → 高額介護サービス費とは
- 使える給付金・補助金を一覧で確認: 介護保険以外の給付制度も含めて網羅 → 介護の給付金・補助金一覧
- 施設の費用相場を詳しく知る: 特養・有料・グループホームを費用で比較 → 老人ホームの費用相場
- 自己負担割合を確認する: 1割・2割・3割の判定基準を解説 → 介護保険の自己負担割合
費用の見通しが立ちました。まずは親の年金や貯蓄の状況を確認して、どれくらい準備が必要かを家族で話し合ってみます。
それが一番大切なスタートです。費用の全体像を知っておくだけで、いざというときの慌てぶりがまったく違います。介護費用は「かかるもの」として前提に置きながら、使える制度を組み合わせて、無理なく続けられる体制を整えていきましょう。疑問が出てきたら、地域包括支援センターや市区町村窓口にいつでも相談できます。
関連するガイド
出典
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」— 介護費用の実態 (参照: 2026-06-21)
- 生命保険文化センター「介護にかかる費用はどれくらい?」 (参照: 2026-06-21)
- 生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」報告書本編(PDF) (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和6年度」 (参照: 2026-06-21)
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2023年」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「介護保険制度の解説」(令和7年版) (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「高額介護サービス費の見直しについて」 (参照: 2026-06-21)
- 厚生労働省「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)について」 (参照: 2026-06-21)